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第67話

「そりゃあ、オレはガキだよ。金もないし千早を車で送るなんて何年先になるか分かんない。」 信号が青に変わっても立ち止まったまま話す桂。 「・・・おい、青。・・・行くぞ。」 そう言って歩き出そうとする俺の手を引っ張ると、「聞いてんのか、オレの話。」という。 「聞いてる。桂がガキだっていうなら、俺だっておんなじ。俺もガキだから、天野さんに子供扱いされたまんまだ。」 「・・・ヤッタクセニ・・・・」 小さな声で吐き捨てるように言ったのが聞こえた。 その通り。桂には報告はしていないけど、確かにヤった。 ていうか、手ほどき?してもらったんだ。 けど、俺は天野さんではなくて桂を選んだ。なのに、そんな言い方をされると腹が立つ。 「うるさいな、いちいちそんな事言う事じゃないだろ。察しろよ!」 少々キツイ言い方で桂に向き合えば、 「はあ?・・・察したくないから聞かなかっただろ、今まで・・・。」 桂も声高になってきて、俺たちは信号機の下で言い合いみたいになってしまう。 「人が見てる。もう帰ろうぜ、コンビニ行くんだろ?!」 俺はウンザリして歩き出そうとするが、まだ話の続きをする桂は立ち止まったまま。 「結局・・・千早はオレに何も言ってくれないじゃん。ホモかもしれないって悩んだ事も、オレに相談せずにあの人に相談して、おまけにヤっちゃってさ。オレの方がずっと前から千早を知ってるってのに・・・。」 「・・・・・桂・・・・・声、デカイから・・・。ヤるとか言うな。」 バカみたいなことを往来で言い合っている俺たち。 通り過ぎる人が二人の顔を見ていくから恥ずかしくなった。 「もう帰る!!今日は勉強やめだな。」 と言って、俺は信号の点滅する横断歩道を走って行った。 くだらない言い合いはしたくないのに・・・。 天野さんの事をバカにされて、頭には来たけど桂には負い目もあるから・・・。 天野さんがいなかったら、俺はずっと一人悩んだままで、桂にだってこんな風に気持ちを伝えることは出来なかった。 通りを挟んだ俺と桂。 俺は背中を丸めると舗道を歩いて行く。 後ろを振り返る気にもなれなくて、じっと下を向いて歩いた。 ふぅ~っと息を吐く。 こういう事で喧嘩したくはなかった。俺の性癖の事が、結局は二人の間に溝をつくるんだと思うと悲しくなる。 一緒に居たい。ただそれだけの事なのに・・・。 桂の家のある交差点に差し掛かる。 と、俺の後ろからバタバタと足音が聞こえてきた。 ふいっと振り返った俺に、桂の腕が絡みつく。 「・・・ってぇ・・・。くび、締めんな。」 そう言って振りほどこうとするが、尚も桂は俺の身体を羽交い絞めみたいにしてきた。 「も、お・・・、子供のプロレスじゃないんだぞ。ふざけんな!!」 俺はキレ気味に言うが、腕を離した桂は、今度は俺の手を握ると自宅の方へと引っ張って行った。

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