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第92話 *

   ギッ、という足音がドアの前で止むと、「千早、寝た?」と桂が声をかけてきた。 ベッドの上で、パソコンを眺める俺は「イヤ、まだ寝てないよ。・・・」と返事を返す。 その声でドアが開くと、桂がドライヤーを片手に持ちベッドの側にやって来る。 「ほらー、やっぱり髪の毛乾かしてないよ。」 そういうと、ベッド下のコンセントの差し込み口にドライヤーのコンセントを突っ込み、スイッチを入れると温風を出した。 「なんだよ、俺はいいって!!」 向けられた風を避けて頭を振るが、尚もしつこく頭をめがけて桂が風を当てにくる。 俺は相変わらずの長髪で、乾かすのが面倒になるとそのままバスタオルを巻いて寝てしまう事があった。 桂は、時たまそんな俺の事をチェックしに来るんだ。そして、強制的に髪を乾かしていく。 「まったく・・・、いつからこんなにめんどうくさがり屋になったんだ?それにそのヒゲも!!」 「ヒゲは別に・・・・ちゃんと手入れしてるし。」 「もう剃った方が楽だと思うんだけどな。大学生の頃はまだしも、一応社会人だしさ。それとも雑貨屋にはそういうオシャレが必要なのか?」 頭をくしゃくしゃとされながら、半分気持ちよくなっている俺だったが、このヒゲに関しては桂に言っていないことがあるので、ちょっとドキドキしてしまう。 「オシャレなんだよ、俺は。・・・いいだろ?!似合うって言われてんだからさ・・・。」 「絶対ない方がいいと思う。せっかくのキレイな顔が・・・、台無しだよ。」 「悪かったな、・・・・キレイとか言うなよ、キモイから。」 無言で俺の髪をすくようにとかしてくれるが、その「キレイ」と言われるのが嫌だった。 大学に入って真っ先に、何人かの女子に囲まれると、メール交換やらサークルの勧誘やらされて、決まって言われるのが「男の子のわりにキレイな顔してる。」って事だった。 あと、前にモデルとして載った雑誌を持っている娘がいて、ちょっとした騒ぎになると、男連中からも変な目で見られるようになった。 もちろん、大学の中には俺と同様ゲイの奴らもいて、それとなく分かる様に誘ってくる。 そんな毎日の中で、ウンザリした俺は髭を伸ばす事にしたんだ。 少しでも、顔について言われる事が無いように考えての事だが、桂に言えば変に気を回して心配するから・・・。 以来、ずっとこのむさくるしい顔が俺の定番となっている。 評判がいいっていうのはウソで、俺の昔を知る奴のほとんどは剃れって言ってくる。 天野さんにもカットに行くたび言われるが、もう止める訳にもいかなくて・・・。 「千早の顔は、ずっと昔から好きだった。千早んとこのおばさんに似ていて、やっぱり親子だって分かるもんな。羨ましいなって思ってたんだ。」 毛先の髪を握る様にして、風を当てながら桂が言う。親子の話をするときの桂は、自分では気づいていないだろうけど寂しそうだった。中学からずっと離れたまま、親父さんは年に1度帰国するかどうかで、俺の想像ではアメリカに女性がいるんだろうと思う。 でなきゃ、一人息子を放って置くわけが無い。いくら桂が出来のいい息子で、手がかからないからといって・・・。 でも、昔と違って今は俺がずっと傍にいるし、今さらここに帰って来られても困るんだけどな。 「よし、乾いたぞ。・・・もう寝ていいよ。」 桂はドライヤーをしまうと言った。 俺は、桂の手からドライヤーを取り上げると、それを床に置く。 それから、そのまま手を繋いでベッドの上へと引き寄せた。 「・・・千早・・・、明日も仕事だから・・・。」 「分かってるよ。10分だけ、ちょっとだけ抱いて。」 「・・・10分って・・・・・。そりゃ無理だろう・・・。」 俺の身体を上に乗せると、桂の手が俺の背中に回り、シャツの隙間から指を伝い腰にそって撫でていく。 スウェットパンツはあっという間に下げられて、俺の臀部が露わになると桂がぎゅっと掴んでくるから力が入った。 双丘を揉まれると心地良くて、何度もされるとそれによって擦られる俺のものも形を成してくる。 「ヤバイって・・・」 向かい合って密着した身体を浮かせるようにするが、桂はしっかり俺を抱きしめたまま。 鼻先を擦り合わせれば、ゆっくりと唇を食む。 チュ........ 軽いキスを何度も交わすが、その間も俺の臀部は桂に揉まれて、やがてその指は敏感な窄まりへと延びてきた。 「かつら・・・」 「・・・10分じゃ解せないな。今日は触るだけ・・・。」 言いながら、指先を口に含んで湿らせると、俺の後ろにつぷっと差し込んだ。 「ぁ........」 思わず声が。 久しぶりの快感に、俺の理性は崩されそう。 桂の唇を何度も食むと、咥内へと舌を入れてすくうように絡めた。 桂の腹に当たった俺のものは益々弾力を増すが、それに比例して桂のものも硬くなるのが伝わってきた。 俺の手をそこに当て、パンツの上から扱くように擦ると、桂の目も潤んでくる。 は、........ッ 桂は腰を浮かすと自分でパンツをずらし、自分のモノが俺のと重なる様に握りしめた。 あ......ぁ....... 二人のものを互いの手で包むように扱く。 キスをして、片手は扱きながら、もう片方の桂の指は俺の後ろを抜き差しする。 俺は、じっと目を閉じてそれを受け入れた。 はぁ、........ぁ.......あ、.......... 限界まで堪えると、桂の顎に歯を立てた。 「イく......ッ....」「オレもっ。」 そういうと、二人の手の中で、ほとばしる白濁が・・・・。 俺の後ろに入れた桂の指が抜かれると、なんだか寂しい気がするが、明日のために今日はここまで。こういう所は、つくづく大人になったな、と思う俺だった。

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