96 / 167

第96話 *

 浴槽に張った湯は、荒波の様に揺れると波しぶきとなり、俺と桂の間でぶつかり合った。 ん............っ ピッタリと身体を寄せ合うと、互いに唇を貪り合い、濡れた背中を長い指が這う。 浴槽からは、胸から上が出ているが、冷えた肩も気にならない程、俺たちは熱く燃え上がり互いの臀部をぐっと引き寄せ合った。 熱くいきり勃つモノを互いの腹で擦り合えば、益々鼻息は荒く、唇はもう這う場所がないくらい顔や首すじに吸い付いている。 「か、つら.....も、ぅ......ダメ.....」 泣きを入れたのは俺の方で、触ってほしいのに狭くて腕が自由にならない。 「はぁ、......もうギブアップ?.........早いな........」 余裕の口調で、桂が俺の目を覗き込んだ。 その瞳の奥はすごく挑発的な色で。 まるで俺の心と身体を弄んでいるようだった。 「かつら....お願い......もう、一回イっていい?.....」 「.......仕方ないな.......、その淵に手、ついて。」 「え?.....風呂の淵っ......て、」 聞いた傍から腰を掴まれると、俺は浴槽の淵に腰掛けるように座らされ、大きく膝を割ると桂はそこに顔を埋めた。 「おッ・・・・・オイッ・・・・!!!」 慌てる俺の膝を閉じない様にすると、下から太ももを掴むようにして引き寄せる。 俺は、不安定な薄い浴槽の淵を掴むのがやっとで、気を抜けばつるりと滑ってしまいそうになった。 「か、つら.........ぁ、」 それだけ言うと、声を出すのも辛くなるほど背中がゾクッと震え、鼻から抜けた息は甘い吐息に変わる。 桂は、敏感な先端部分を舌先で味わうと、そのまま一気に咥内へと咥え込む。桂の口の中で、どんどん熱くされた俺は、今にも爆発しそうなのを必死で堪えた。 じゅっ、....じゅぽッ...... 湿った浴室に淫猥な音が響き渡ると、もうこれ以上は堪えられなくて・・・・。 ひあッ........ああぁ.......ッ 腹の筋肉がビクンと痙攣しながら震え、思い切り顎を引くと真下に桂の頭が見えたが、一瞬覗いた喉仏は上下に動いた。 - また飲んだな、・・・・・・・?! はぁ、......はぁ....... 息を整えると、桂は立ち上がって俺の顎を掴んだ。 それからキスをすると、自分の手の中で大きく張り詰めたモノを扱いて解放する。 それは、俺の頬を掠めてドクドク飛び散ると、桂の指を伝って俺の胸にもかかってしまった。 ぁ、...... はぁ、........はぁ....... 荒い息を吐きながら、桂は俺の腿に手を乗せる。 「のぼせそうッ、っていうか、のぼせた!」 俺は、声をあげると浴槽から身体を出し、洗い場のシャワーの栓を捻った。 頭から冷たい水を浴びると、ブルブルッと髪を揺さぶり今度は熱いお湯で身体を洗う。 その間も、桂は浴槽の淵に手を突いたまま、じっと俺の姿を眺めていた。 「先にあがるッ。髪の毛乾かしてくれるよな?!」 「おぅ、・・・・分かった。」 頭にバスタオルを巻き付けると、俺は身体を拭いてそのまま部屋へと移動した。 桂が来たのはそれからすぐ後の事で。 俺の髪を乾かすって言ったのに.......... 結局、もう一度風呂へ入る事になってしまう。 一度灯が点いた俺たちは、この先の会えない時間を埋めるように、また肌を重ね合う。 そして、口には出せない想いをぶつけ合うように、その晩は何度も燃えあがってしまった。

ともだちにシェアしよう!