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第148話

店の片付けに時間を取られ、俺が家に戻ったのは夜の10時をまわっていた。 何か食べられるものをと思ってコンビニに寄るが、おーはらが仕度をしているかもしれないので携帯に電話を入れる。 ・・・・・呼び出しの音の代わりにメッセージが流れ、何故か電源が切れているらしい。 - おかしいな、サイレントになっていても電源を落とすことはなかったのに・・・・ 何処か電波の届かない場所にでも行ったか・・・・? 取り敢えず、つまみになりそうなものとビールを買った。 それから謙が来たときの為に、カップアイスを三つ。 家に着いて玄関のカギを開けて入る。と、そういえば玄関のたたきがスッキリしている事に気づく。 朝は気にも留めなかったが、おーはらの数少ないスニーカーが見当たらない。 下駄箱の中にしまったのかと思って見たが、そこにもなかった。 不意に、胸がざわつき始めると、慌てておーはらの使っている部屋のドアを開け放った。 布団はきちんと畳まれていて、アイツの学校の教材も見当たらなくて、もちろんあのデイバックも。 俺は部屋の中をぐるりと見渡すが、もともと置いてあるものはそのままで、おーはらがここに来る前の状態に戻っていた。 - アイツ・・・・どこ行った? その晩はビールを飲みながら、心を落ち着かせようとして普段は観ないテレビを点ける。が、気を抜くとおーはらの姿が脳裏をよぎって、余計にざわついた。 立ち上がって、もう一度下駄箱と部屋の中を見直すが、やっぱり何もない。 置手紙すら無くて、本当にどうしたのか分からないまま、一夜を明かした俺。 翌日になって、店に出る前に天野さんの美容室へと足を運んだ。 こんな事は滅多にないが、朝から美容室のドアを開けると天野さんがいるか確かめた。 「おはようございます。・・・オーナーは昨夜から実家に行かれてて、今日は店には来ないと思いますよ。」 そういったのは、新人の美容師さん。 「・・・あの、昨日はバイトのおーはら君来てましたか?」 俺が聞いてみると、「さあ、私は昨日お休みだったので・・・」と言って別の女の子におーはらの事を聞いてくれる。 「ジュン君は来ていましたよ。普通に8時に終わって帰りましたけど・・・・、何か?」 「・・・いえ、別に、・・・いいんです、天野さんに用があったんだけど、電話入れてみます。ありがと。」 軽く手を上げると、お礼を言って店を後にした。 ふぅぅぅ~っ 兎に角、この時間はどのみち学校へ行っている時間。 家に帰らなくても学校へは行っているだろうし・・・・待つしかないかな。 自分でも笑ってしまうぐらい心配になっている。 俺に従順だったおーはらの、突然の行動に、俺の気持ちがついて行けなくて。 どうしてこうなったのか、全く分からなかった。

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