匠さん。さっき、私達って言ってくれてたなぁ。 彼の心の中には俺も居るんだ。。 朱里のママって思ってくれてるのかな。 千景は匠にとって自分の存在が大きくなりつつある事に喜びを感じた。 一方で、今自分が何をすべきかも分かっていた。 千景は２つの感情の狭間で揺れ動いていた。 どうしよう。。 今こんな事考えちゃいけないのに。。 匠さんへの気持ちがどんどん大きくなってる。 自分の隣で気持ち良さそうに眠る朱里の寝顔を見つめ、彼女の頭を撫でながら千景はある決意を固めた。 匠さん、朱里、ごめん。 好きになっちゃってごめんね。。 でも、大丈夫だよ。 朱里と匠さんの家族でありたいから。 2人の傍に居たいから。 俺は貴方との境界線は超えないって決めたんだ。。 千景は口に出して言えない好きという言葉を、そっと心の中で呟いた。。 それから、匠と千景は朱里と一緒に一般的な幼稚園もいくつか見学しながら、週末はデイサービスを利用して児童発達支援の幼稚園に通った。 一般的な幼稚園で境界線級の子どもを受け入れている園も在った。 もしかしたら、そこに入園したら他の園児達と同じ様に話す事が出来る様になるかも知れない。 そんな淡い期待も捨てきれなかった。 だが、言語発達に一年6ヶ月の遅れが有ると分かっていながら、無理に背伸びをして、一般的な園に通わせる事が朱里にとって良い事なのだろうか。。 彼女にとって過ごし易い環境を整える事が自分達がすべき事ではないのか。 彼等は何度も自問自答を繰り返した。 それから半年が過ぎた。 2人で話し合いを重ねた結果。 朱里を週末のデイサービスで利用していた、児童発達支援を兼ねている幼稚園に入園させる事に決めた。 それが今の朱里にとって最善の選択であり、彼女の幸せの為だと信じたからだ。 朱里が成長するに連れ、これからも選択を迫られる時が訪れるだろう。 例え厳しい現実に突き当たったとしても、家族3人で一緒に乗り越えていこう。 2人はそう誓い合った。 明日は朱里の入園式があり、当分は忙しくなるので今日は3人でピクニックに行く予定だ。 朱里がベッドで寝ている中、匠と千景は朝早くからお弁当作りに勤しんでいた。 千景の匠への想いは落ち着くどころか益々深くなっていた。 しかし、今の関係を壊してしまうぐらいなら自分の気持ちは隠し通そうと決めていた。 そう、この瞬間迄は。。