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第3話

 曲が終わり、ステージは暗くなった。  間を繋ぐようにスポットに照らされたシュートとユウタがマイクを持ちMCをしていた。  僕は茫然とそのトークに耳を傾ける。  暗転と同時に、ヒロの気配は消えてしまった。  まるで幻のように。  けれども、僕の中にはまだヒロが注ぎ込んだ熱と欲望が残っていた。 (ヒロ……)  荒くなった息を整えながら、僕はそっと乱れた衣服を直す。  周囲にはモッシュの興奮が残っており、僕の異変に気付く人はいなかった。  そして、再びステージに光が集まる。  それと同時に歓声が上がった。  舞台の上に、ヒロが戻ってきたのだ。  つい先程まで、僕の後ろに――そして、ナカにいたヒロが。  だけど僕は……そして観客たちはすぐに違和感に気付いた。  サトシが、いない。  いつもヒロの隣でギターをかき鳴らしていた、サトシが。 「調教開始だ」 「――えっ?」  その時、いつも耳にする決め台詞が聞こえてきた。  僕のすぐ耳元で。 「サトシ……!?」  その時、音楽が始まった。 「いつまでもヒロにばっか独り占めさせるかよ」  その荒々しい曲に、ヒロの歌声に合わせるように、サトシが僕を抱き締める。 「あと3曲。俺と、シュートとユウタの分な」 「あ、あ……っ」  再び、ライブの熱狂が会場を包み込む。 「ひぁ……っ、サトシ、サトシ……っ!」  その熱に侵されるように、僕はサトシの腕の中に溺れていった――

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