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結婚式当日
ひっそりとした教会で1人、ガタガタと身体を震わせている女性がいた。手には、純白のウェディングドレスが握られている。
「つ、ついにこの日が来てしまった」
女性にしては少し低めの声が、教会の中に響いた。教会、そしてウェディングドレス。この2つの組み合わせを考えれば、考えられるのは結婚式。
結婚式は女性にとって憧れのはずだが、この女性は違うようだ。恐怖で顔を歪ませ、ガタガタ身体を震わせている。
「このまま逃げ出してしまおう、」
ここから逃げ出すことを決意したらしい女性は、スッと立ち上がる。そして教会を出ようとしたが動くことができなかった。
「………逃げたら、もうあの人と会うことも出来ないのかな」
その言葉と同時に、女性の瞳から涙が零れ落ちた。一粒落ちたと思ったら、また一粒。止まることを知らないように、涙は次々と零れ落ちてきた。
「っ、だよ、」
やだよ。
「何を、泣いているんですか?僕の花嫁は」
ギィと扉が開く音が聞こえたと思ったら、聞きなれた声がした。
後ろを振り向けば、いつものようにピシッとスーツを着ている彼が立っていて。いつものような笑みを浮かべながら、ゆっくりと女性の方に歩いてくる。
「あ、」
「こんな幸せな日に、泣かないで。うみ」
うみ。
女性はそう呼ばれると、唇を噛み締めてさらに顔を歪ませた。
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