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平凡女装男子誕生

大学3年生である海星は、窮地に追いやられていた。しかも、大好きな友人にだ。悔しそうに顔を歪める海星の前には、ニコニコと笑う友人Aが。その手には、メイク道具一式が入ったポーチが握られている。 「覚悟決めたか?海星。んにゃ、うみちゃんよ」 「覚悟は決めてねーけど、お前のその笑顔からは逃げられると思ってねーよ」 そもそも海星がこのような窮地に追いやられる理由となったのは、最近流行りの対戦型のゲームでのこと。海星と友人Aが楽しくそのゲームをやっていたところまではいい。普通ではつまらなくなったらしい友人Aが、ある罰ゲームを考えたのだ。 【負けた奴は、女装してイケメンな彼氏を作る】 というもの。 罰ゲームを受ける本人も、そして未来に彼氏になるであろう人にとっても最悪なものだと分かっていたが、海星自身も刺激がほしかったのだ。自分が負け続きというのも忘れて、その勝負を受けていた。 結果。海星の惨敗であった。 そして、負けた海星を女性にするために友人Aが姉から借りたメイク道具を持ってきたところなのだ。 「ウィッグは、後で用意するから。服も」 「…………おうよ」 「平凡なお前でも、可愛く見えるようにメイクはしてやるからな」 自分で鏡を見て、平凡すぎると思っているのにただのメイクで可愛くなれるわけがないだろう。海星はそう思っていたが、30分後それを訂正することになる。 平凡な自分でも、メイクをすれば可愛くなれたのだ。 「ん。さすが俺、完璧」 「メイクって、女性って、何か怖いな」 「うん。俺も、海星をメイクしてて思った」 メイクで変わりすぎた自分に、ちょっと恐怖心を感じた。そして、メイクで可愛くなる(言い方を変えれば、素顔を隠す)女性に対しても同じように思ってしまった。 そして、友人Aが施したメイクに似合うウィッグと服が準備された。 嫌々ながらウィッグをかぶり、服を着て。 こうして、平凡女装男子が誕生したのだ。

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