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第3話

寄せては返す波をボンヤリ眺める。 瑛人は俺を大事にしてくれる優しい恋人だった。 今日から一人ぼっち…… そんな事考えてたら、余計涙が溢れる。 瑛人から貰ったお揃いの革とシルバーのブレスレットを外し、海へ放り投げる。 ブレスレットは夜の海に消えていった。 波の音が響き暗い海が更に気持ちを沈ませる。防波堤に座り、ただ一人で泣いてた。 ひとしきり泣いた後、立ち上がると真後ろに人がいてハンカチを差し出される。 ……え?何、誰!? 恥ずかしい。 いつから、そこにいたんだ。 「大丈夫?」 ドキッとした。 ……瑛人と声が似てる。 それに同じ香水の匂い。 一体、なんの因果だ。 男は何も聞かなかったし、俺も何も話さなかった。 気まずい…… Tシャツを脱ぎ捨てた。 「泳ぐの?」 「別に身投げするわけじゃないから。」 ズボンは穿いたまま海で泳ぐ。  濡れたズボンがやけに重かった。 それに夜の海は真っ暗で飲み込まれそう…… 30分位、経っただろうか。 戻ると男はまだ、そこにいた。 「着替えとタオルは?」 「ない。」 「……俺んちでシャワー浴びる?」 射抜くような目線。 ナンパ……? 自意識過剰か…… どう見ても女に困ってそうな感じじゃない。 「いや。どうせ車だし。明日も仕事だから」 「車!?仕事!? 高こ……大学生じゃないの?」 今、高校生って言おうとしただろ。 聞こえてんだよ。 「失礼な。23歳ですけど。」 「見えねぇ!同い年かよ。」 こんな失礼な男は放っておこう。 帰ろうとしたら腕を掴まれた。 「じゃ、飲みにいかない? 着替え、貸すから。」 「行かない。」 アイツに声似てるとか、同じ香水使ってるとか絶対に無理。 「これ、俺の連絡先。 また会いたい。電話して。」 メモを差し出される。 「俺。」 断ろうとしたら手を引かれた。 同じ香水の香り。 唇に触れるか触れないか、微かなキス。 コイツ、男もいけるのか。 「次に会えるのを楽しみにしてる。」 そう言い、男はポケットにメモを入れ笑った。

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