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第5話

人が賑わう金曜の夜。 瑛人にどうしても会いたくて、我慢出来なくてカフェに行った。 …………一目、姿を見るだけ。 悩みに悩んでやっと来たカフェ。 中には入らず、外から様子を探る。 瑛人は店内にいなかった。 ……なんだ。今日は働いてないのか。 ガックリと肩を落とす。 俺、まるでストーカーだな。 …………帰ろう。 「歩さん。」 ギクリとして振り向く。 瑛人……! 「どうしたの?なんで、ここに。」 「あ、その……取引先がここの近くで。 たまたま通りかかったんだ。」 「……久し振りだね。」 優しい声に目頭が熱くなる。 こんな時に泣いたりしたら言い訳できないぞ。 …………でも、会いたかったんだ。 ずっと瑛人に会いたかった。 勝手ににじむ涙。 痛む胸を押さえる。 「誰?」 ハッとして瑛人の隣にいた男に目が行く。 背が低くて肩幅が細く、オシャレで可愛い感じの人だった。 「……友達。」 瑛人の答えにもズキズキ胸が痛む。 何か感じ取られたのか、その人は瑛人の腕にギュッと抱きついた。 「瑛人さん。行こ。」 新しい恋人は年下なのか。 外では恥ずかしくて、俺は手すら繋いだ事なかった。 腕を組む二人はお似合いだった。 次に選んだのは可愛いタイプの人でなんだか納得してしまった。 「じゃ……」 早くこの場を離れたい。 「待って。歩さん。」 俺を呼び止める声を振りきって背を向け、足を進める。 …………泣くな。こんな町中で。 「歩さん!」 もう呼ばないで。俺を…… グッと唇を噛み上も向き、雑踏を抜ける。 『好きな人が出来た。』 …………知ってた。 知ってたよ。 カフェに行かなきゃ良かった……

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