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バカみたいに声が大きかったのだろうか、その影は俺に顔を向けた。
只、月明かりしかないのに、その頬に涙が伝って溢れていることがわかった。
キラキラ、ハラハラ、生温い夜風が木々を揺らして、やたら五月蝿 い。
「それ何 て 曲だ ったっけ?」
こんな真夜中にこんな所に人がいる事の方がおかしいのに、何とも的外れな質問だった。
「この 曲入って る CD貸しただ ろ。」
俺も何故か笑って律儀に答える。
「悪 い 、実家に置きっぱだ と思う。」
「バカじゃ ん 。」
「う る せ え 。」
あの時よりは少しだけ凛とした顔立ちになった宮川は月明かりに照らされて、なお綺麗だと思った。
あの時には踏み込めなかった宮川の深層 へ一歩進めることが出来るのも10年の月日の経験と成長の賜物 。
「何 で 宮川が泣 い て る の ?」
宮川は嘘の笑顔を浮かべるのが上手になっていた。だけど俺はそれを暴く言葉を覚えた。
「此処には俺しかい な い か ら 、教えて くれない ?」
真剣な顔も覚えた。物理的に歩を進める速度も覚えた。身長差は少しだけ縮まっていた。
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