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「本当、あの 時にお前が差し出してくれて た 手を掴んで たら、こん な大人にならな くて 済んだの か も しれな い 。」
宮川の後悔は、夜風に掻き消されることはなかった。その虚ろそうな瞳からはまた涙が溢れている。
「……その 涙は五島の ためか?」
俺は宮川に頷いて欲しくない。
宮川は悲しそうにまた笑うと、首を横に振って否定した。それに俺は胸を撫で下ろした。
「10年、ずっと…縛られて た 。俺は五島しかい な い っ て 、心の 中で思い込まされて た 。」
一歩、近づいた。
「また馬 鹿 ら しい こ と した……五島の勝手な欲望に溺れて し まっ た 。」
もう一歩。
「意味ない の に 、五島に抱かれて、五島の 嘘を鵜呑みにして……此処であの 日みたいに穴井を待って た …。」
あと、一歩。
あと、数センチ。
俺はやっと宮川に触れることが出来た。
身長差は10cmもなかった。
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