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「天宮くん。これは君が望んだ遊戯なんだよね?」
耳元で囁き、突起を指先で強く挟む。天宮くんはコクコクと頷き、艷やかな瞳からシトシトと涙を零す。悔しげに顔を歪めた鎌頼の姿は愉快で堪らない。
「それなのに、君は酷いことをしていると言った。こういう嗜好の人間を否定したのだ。罪なことだとは思わないか?」
青ざめていた表情の鎌頼は、返す言葉が見つからないのか口を噤んでしまう。天宮くんには、黙り込んでいては分からないと言っていたくせに、とんだお笑い草だった。
「君はもう用が済んだんだろ。早く帰ると良い」
鎌頼は黙ったまま、蔵の扉を開けるとそのまま振り返ることもせずに出ていった。
「酷い奴だね。僕の考えていた通り、彼は君には相応しくない」
僕に体を預けていた天宮くんに、呆れたように言葉を掛ける。天宮くんは頬を涙で濡らすばかりで、口を噤んだままだ。
「安心し給え。彼は決して今日の事を言わない。彼も共犯者なのだからね」
天宮くんの頬に舌を這わせ涙を拭い去ると、塩っ辛い味が口の中に広がっていく。天宮くんは微かに体を強張らせるも、直ぐにぐったりしたように力が抜き凭れかかった。全てを委ねるようなその姿に、僕は愛らしさを感じてしまう。
「此処ならばなんの気兼ねもなく、僕たちは遊戯を楽しめるのだ。だからそんな顔をしちゃいけないよ。君は友人を一人、失ったと思っているのかもしれない。でも、それは間違っている。人数の問題ではなく、如何に君を理解してくれる人間が傍にいるかが大事なのだよ」
慰めるように僕は、天宮くんの艶やかな黒髪を指で梳いていく。
「僕は君のその嗜好を理解してあげられる。君を残して帰った、欲だけを吐き出す善人面した獣とは違うのだよ」
鎌頼は善人の仮面を被った獣だ。だからこそ僕は、鎌頼を嗾 けて此処に来るように指示をした。彼が天宮くんを理解してあげるなど、毛頭無理な話だと分かっていたのだ。これで天宮くんも彼の人畜っぷりを、身をもって理解したはずだ。
天宮くんの傷心は、此れからは僕が癒していけば良い――
僕は悄然としている天宮くんの耳元で囁く。
――天宮くん。僕は決して君を手放したりなんてしないからね。
終
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