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第5話
「狭山、……かけおち、しようか」
事を終えてシャワーを浴び、浴室から出てきた狭山は、唐突な相沢の言葉に大きく目を見開いた。
「……どういう意味ですか」
「……俺は元々女が好きだし、結婚だって、満更でもなかった」
相沢は立ち上がると、狭山の傍へ歩み寄り、濡れた彼の髪に指を通す。
「でもさ、俺……まあ、単刀直入に云う
が」
狭山は自分より背の高い男をちらりと見上げる。その頬は微かにだが、意味有り気に紅潮していた。
「まあ……うん、君に惚れた」
「……え?」
あまりにも突然の、そして真っ直ぐな、愛の告白。真っ直ぐすぎて、狭山は暫くの間、その意味を理解できなかった。
「今日……君が俺を想っていてくれたことを知って、沢山の知らなかった君を、君の表情を見て、思っちまったんだよ。……こいつのためなら、全てを捨ててもいいんじゃないか、って」
相沢は少し早口で、そう付け足した。その言葉を呑み込み、幾度か反芻して、狭山はようやく言の葉の意味を理解する。
「え、な、何でそんな……!」
途端に、狭山の全身は茹でダコのように真っ赤に染まった。言葉も上手く紡ぎ出せず、パクパクと口を開閉させる。
「……だからさ、これから」
そんな狭山に、相沢は覚悟を決めたように向き直り__、
「俺だけに見せる顔、見せてよ」
そう云って、狭山の大好きな笑顔で、ふわりと微笑んでみせた。
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