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おまけ

  ───── ───────── ──────────── 昊が赤づんで赤卒がちらほらと飛び交う頃合いを狙って、僕は墓地に訪れていた。あの人から貰った浴衣を着て。 早瀬家と刻まれた墓石を前に、僕は手をあわせた。花と線香が添えられているのは、先客がいたからだろう。 「ようやく踏ん切りがつきました。長いこと待たせてしまって、すみません」 そして、そういうのも墓の中に眠っているのが先祖ではなく、あの人ひとりだからだ。手に持った匂袋からは、センパイと同じ銀木犀の淡い匂いが漂っている。 「あの、母さん。センパイはもう母さんのことを許してくれていると思います。だから、もう心配しないでイイと思います」 添えられている花があの人こと、母さんが大好きだった秋桜だったから。淡い銀木犀の花を愛でいたのは、母さんがゆいいつ愛した人でセンパイのお父さんである。婚約者がいた彼を母さんは愛して、センパイを産んだ。だけど、母さんは妾にもなれず、センパイからも引き離されたと植木先生から聞いた。ソレから、僕の父さんと結婚して僕の母さんになったけど、母さんは心を患ったまま僕と父さんを置いて逝ってしまった。 「ち、ょっと、鳴海くん、なんか俺、悪いことした?」 墓石に向かっていう言葉じゃないよ、ソレ?と頭上から聞こえてくるセンパイの声は、どこか淋しいモノがあった。 「そうですか?アレほど僕にちょっかいだしといて、他の女の人と簡単にあーんなことするセンパイの近況報告としては、物凄く妥当な言葉だと思いますけど?」 刺々しくつき刺すようなモノのいい方をするのは、少しは反省して欲しいという僕なりの顕れである。だけど。 「あ~れ~?アレほど、高坂さんに哭かされているのに、俺にも啼かされたいの?」 そうセンパイにいわれたら、僕は紅濁した顔で慌てて彼の口を手で塞ぐしかなく、完敗するのだった。 「初々しいね」 そんな僕とセンパイの後ろで、植木先生は僕の反応を物凄く楽しんでいるようだった。ソレは花火大会が行われる数刻前のことだった。  

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