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ラストノート

  それから、高雄は満重に全身の匂いを嗅ぎまくられた。耳の裏や首筋、脇の下や脚の付け根まで。 満重の行動は変質者そのものだし、怖いし、抵抗してるのに力負けして押さえこまれてしまうしで、悔しいやら情けないやらで、高雄は涙目になってしまう。 強気な高雄にしては哀願するような、追い詰められたような声で叫んだ。 「お、俺が悪かった! ごめんなさい! タバコやめるから! やめろ、気持ち悪いからッ」 「……やめなくていい」 「あっ……ちょっと……そこはいかん!」 はぁはぁと息を荒げながら興奮している満重に、高雄も妙な気持ちになってきていた。 高校二年生とは、風が吹いてもちんこが勃つようなお年頃だ。 満重の細くて指の長い、男らしい大きな手で体を撫でまわされ、耳に荒い呼吸を感じてゾクゾクとする。 それに、さっきから勃起した満重の股間を擦り付けられいるのだ。つられて高雄の股間も硬く勃ち上がりはじめていた。 ───それだけはダメだ! 情けなさすぎる。 「くっそ……ッ!」 「痛ッ!」 最後の力を振り絞って、高雄は満重に頭突きをした。一瞬怯んだ隙に体の下から這い出して、机から転げ落ちるように逃げた。 「……このッ」 だが、高雄の抵抗が逆に満重を煽った。 普段物静かで品行方正な優等生は、獣のように息を荒げて高雄を引きずり倒し、感情のままに頬を張った。 「ッてぇな! クソッ!」 「そうやって、お前が僕を煽るから……ッ」 「あっ! なにす……!」 満重は高雄のズボンのベルトを抜き取り、テキパキと後ろ手に縛ってしまった。 勃起して興奮してるくせに、なんで宅配のおっちゃん並みに手際がいいんだ!? サガワかよ! と、高雄は心の中でツッコんだ。 「僕が見ていたのを知っていて誘ったくせに」 「誘ってねぇよ! つーか、お前の目、細くて見てるのか見てねぇのかわからねぇんだよ!」 「見てる……ずっと、見てたよ」 両手でがっちりと顔を掴まれて、覆いかぶさっている満重と目を合わせられた。 ばっちり見つめ合っている。 満重の切れ長の瞳は高雄を射抜くように見ていた。 「……ああ、どうしよう……どうしようもないか、ここまできたら」 「な、なにがぁ? あ、諦めるんじゃない! 諦めたらそこで試合終了だぞ!」 尋常じゃない色気を含んだ満重の声に、高雄の声がひっくり返る。 何をするつもりだ、やめろ、ほどけ、と言おうとした口を満重の唇で塞がれてしまったのだった。    暴れる高雄を器用に押さえこみ、満重は高雄の尻に勃起したちんこを捻じ込んだ。 気持ち程度に唾液で濡らされた尻の孔に突っ込まれた高雄は、苦痛の叫び声を上げようとしたが、満重の大きな手で口を塞がれた。 「イッ!!……ぐぅあ!──んんぅ───ッッ!!」 満重はもう一言も喋らず、高雄の孔を己の勃起したちんこで抜き差しし続けることに夢中になった。 高雄は目を見開いたまま、ガクガクと揺さぶられる。 ───痛い痛い! くっそ! 先生、来て──! いや、ダメだ、来るな! こんなとこ見られたら、恥ずかしさで死んじまう…… 「いっ! くそ……てめぇ、あぁっ!」 ───げっ、なんか変な声出たっ! 延々と出し入れされているうちに痛みは鈍くなっていき、高雄はおかしな感覚に陥りはじめていた。 満重の熱くて硬いちんこがズルリと抜けていく度、ゾワゾワと鳥肌の立つような悪寒が背を駆け抜ける。 「あ"っ、あ"っ、あ……とまれっ……抜けって!」 旧校舎の理科準備室は二人の荒々しい呼吸で満たされていた。 満重の下腹部と高雄の尻がぶつかる音が生々しい。尻の孔は卑猥にひくつき、満重の勃起したモノをがっちりと咥えこむ。 高雄のモノも立派に勃ち上がり、満重に揺さぶられる動きに合わせて、パチパチと自身の腹を打った。 「う、そだろッ……あ、なんで勃って……う、ヤバい……ぅあッ」 「……っ……イキそうだ」 「!?……まてッ……あ"……な、かだしだけは、ううッ……許さッ!!」 ガツガツと乱暴に突き上げられて舌を噛みそうになった。満重は十代の若い欲望の暴走するままに、高雄の尻を犯し抜く。 悔しいが、それに引きずられた高雄も満重の腹に己のモノを擦りつけるようにして絶頂を目指した。 「ちくしょッ……てめ、絶た……殺……あッあッ、や───イクッ……ッッ!」 「……ッ!」 二人はビクビクと痙攣して、ほぼ同時に射精した。なんのテクニックも駆け引きもない、青臭いセックスだった。 「……はぁッ……はぁ……は」 少しずつ乱れた呼吸が治まってきた。高雄は苦々しげな表情で舌打ちした。 悔しいやら情けないやら……ぶっちゃけ、気持ちよくイッてしまったのだから。 「おい……抜け」 ───証拠隠滅だ。よし、満重を殺そう。 絶頂の余韻の中、高雄の脳裏に物騒な考えがよぎったとき、まだ繋がったままの満重がぎゅっと抱き締めてきた。 深く深く高雄の匂いを嗅いだ。 「……ああ、なんてことだ」 「お前、そりゃ俺のセリフ……」 「最高のラストノートだ。僕の精液とタバコの匂い混じりの君の体臭……信じられないくらい……イイ。よすぎる。あんなに悩んでいたのにどうだ? 頭がクリアになった。最高の気分だ」 「はぁ?ふざけんなよ。てめ、よくも……ひゃあっ!」 「もっと早く、こうすればよかった」 満重がガバッと起き上がったので、胎内に残る男根がぐりゅっと動き、高雄はおかしな声を上げてしまった。 「僕をこんな体にしてしまった君には、責任をとってもらう」 「えっ」 「タバコやサボりのことは先生には黙っておくし、頭の悪い君に勉強も教えてやってもいい」 「いや、いらない。勉強嫌いだし、タバコやめるし。お前の言ってること頭おかしいし」 「やめなくていい」 満重の声が低く、甘くなった。高雄はゾッとして逃げようと思ったが、縛られたままだし、ちんこを突っ込まれたなので逃げようがない。 「それに合理的な関係だと思う。君だって気持ちよかったくせに」 「うるせぇ! レイプ魔の変態!」 「十代の性欲には発散が必要だ。非行に走る君のフラストレーションの発散にもなるし、僕の頭もクリアになる。これで悩みすぎて成績を落とすことも回避できそうだ」 「勝手な……ひっ!」 満重は再び腰を蠢かしはじめた。高雄は背を反らせて、唇を戦慄かせる。 「さっきは自己中心的なセックスだった。それは謝罪する。申し訳ない。今度はもっと君を気持ちよくする」 「あっ……いいっ、いらな……は、あ」 宣言通り満重は高雄の性感を高めるように、高雄の表情を注意深く見ながら腰を動かした。 満重の切れ長の一重の瞳が妖しげで、女子どもが「エロい」と騒いでいたのを思い出す。 「そんな目で見るな……っ」 「……高雄」 「……ッ!?」 急に名前を呼ばれて、高雄の鼓動が跳ね上がる。つい満重のちんこを締め付けてしまい、満重は悩ましげに眉根を寄せた。 ───これが終わったら殺そう。ボコボコにしてやる。   そう心に誓い、高雄は目を閉じて身を委ねた。 十代の精力有り余るセックスは日が暮れるまで続いた。 最後の方は「ああ、もうおかしくなっちゃう。許して、イカせて、イヤ、だめ、イカせないで」と、訳のわからぬ言葉を口走っていた。 人生最大の黒歴史だ。 薄暗くなった旧校舎の理科準備室。 情事の後の乱れた呼吸が少しずつ緩やかになった頃、満重は制服を着て、黙って出ていった。 「……あのやろう……散々好き勝手やったくせに、ヤり逃げかよっ」 高雄はすっかり掠れた声で毒づく。 確かに高雄も気持ちよかったし、何度もイッてしまった。 別に満重に好意なんて感情は一ミリもない。けど……終わった途端にポイされては、自分がティッシュみたいに薄っぺらい存在のように思えた。 情けない。泣きたくなった。 割りきったエッチだったはずなのに「体だけが目当てだったのね!」と、事後になって言う女の子の気持ちがわかってしまった。わかりたくなんてないのに。 高雄の目に涙が溜まりはじめたとき、理科準備室のドアが開いた。 「な、なんで?」 満重か濡らしたタオルを持って戻ってきたのだ。唖然としている高雄の体を拭いて、情事の後始末をはじめた。 「いい、自分でやる」 「無理をさせたのは僕だ。君は寝ているといい」 汗と精液まみれの体を綺麗に拭かれて、中出しされたアレの後始末までされてしまった。 更にぐったりしてしまった高雄は満重の手で制服を着せてもらった。ある意味、至れり尽くせりかも……。 これが王子様対応か、と感心したが、「いや、こいつはレイプ魔だ」と、思い直した。 「立てるか?」 満重にそう聞かれて、高雄は立ち上がろうとしたが、腰がポンコツでくにゃりとへたりこんでしまった。 「仕方ない。ほら」 「なんだよ」 「背負って家まで送ってやる」 「はぁ!? ふざけんな、ガキじゃねえんだぞ!」と、腰が抜けたままの高雄が吠えたが、満重は華麗にスルーして高雄をおんぶした。 悔しいが、もういっそ満重を足がわりに使ってやれと、高雄は満重の背中に乗っかり、家まで送ってもらった。 「体調の悪い高雄を送ってきた」という満重を見て母親は喜んだ。 高雄の友達は馬鹿でヤンチャなやつばかりだが、満重は見るからに品行方正な優等生で、顔は流行りの歌舞伎役者だ。 「満重君! また来てね。高雄のことよろしくね」と、母親は要らぬことを言い、満重は「はい」と、爽やかな笑顔で答えていた。 「二度と来るな。ぶっ殺す」 「こら! なんてこと言うの、あんたは!」 「いてっ」 母親にぽこっと叩かれた高雄を満重は微笑ましく見ていたが、 「じゃあ、また……高雄」 ちょっとゾクッとする声でそう言って帰っていった。 ───ちくしょう! なにドキっとしてんだ、俺は! 満重がキモいからだ。 絶対に「また」なんてねぇからな! 殺してやる。ボッコボッコにしてやる。 ……残念ながら高雄は満重を殺すことはできず、ずるずるとなし崩しに秘密の関係が続くことになるのだった。 満重はぶっちぎりで絶好調、高雄は成績がちょっぴり上がった。 そして、高雄の禁煙も失敗に終わるのであった。 end.

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