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Ⅳ 夏恋Night Date -完-
「なぁ、縣」
返事の代わりに手を掴まれた。
「先輩?」
背中を押される。
どうして、まだお化け屋敷にいるんだろう。
「わっ、眩しい」
真夏の太陽が近い。
階段を登って辿り着いた場所は、塔の頂きだった。
「ここから花火がよく見えるぞ」
でも花火大会が始まるのは夜だ。
今は真っ昼間
「じゃ、始めるか」
にまー♪
「始めますか」
にまにまー♪
パタンッ
窓と扉が閉まった。
真っ暗だ。
なにも見えない。
まさかっ
もしやっ
「お化けのリハはしなくていいんだぞー!」
エッチ反対!
貞操死守!
ドキドキドキ
心拍数が上がる。
ドキンッ、ドキンッ
鼓動が飛び出しそう。
真っ暗闇で、二人の温もりが寄り添って……
右手と左手を
握る。
縣の手と、桐生先輩の手
パァアーンッ
打ち上がった真夏の大輪
「これって……」
「プロジェクションマッピング」
「俺達、牛若PJの企画モニター引き受けたんだ」
パァンッ、パアァンッ
暗闇にキラキラ、色彩が輪を連ねて花開く。
「夜にはこの映像が、本物の花火と由比ヶ浜の海とコラボする」
「京太も一緒に見ような」
副社長の言ってた約束って、この事だったんだ。
昼間の海で、夜色の花火を、俺は大好きな二人と眺めてる。
すごく贅沢だ……
「副社長にお礼がしたいな」
「それならさ、明日のビーチバレー大会の天然かき氷」
「賞品、俺達二人分を橋本にやるから、一つ副社長に渡すか」
「うん」
でも、それじゃ俺が頑張った事にならないよな……
あ、でも!
「頑張ってくださいね、って織部さん言ってた」
俺は恋を頑張ればいいんだ。
恋せよ、若人!
ぎゅっと二人の手を握った。
夜空に浮かぶ牡丹の袂で……
「縣、桐生先輩。大好き」
いっぱい夏恋しよう!
チュッ♥
チュッ♥
花火が打ち上がるのと同時に、
右の頬っぺたに縣
左の頬っぺたに桐生先輩
キスされた俺の顔、花火よりも真っ赤
ドキドキする鼓動は、俺の胸?
それとも縣?
桐生先輩?
案外、縣も先輩もドキドキしてたりして。
そんな事考えたら、フっと笑みがこぼれた。
「ご馳走さま♪」
「美味しい♪」
花火の光と一緒に飛び込んだ唇
二人交互にキスされて、耳まで真っ赤だ。
意地悪な競パン野郎めっ!
「………あっ!」
「どうした?京太」
「なんだ?橋本」
パープルの競パン★
「織部さんのかき氷っ」
―完―
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