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第1話
今でも、彼のことを思い出す。初めて恋した中学時代のクラスメイト、進藤天音(しんどう たかね)のこと。
別々の高校に進むことになった彼とは、ファーストキスから、すべてを経験した。
切なかった。苦しかった。
でも、幸せで震えたあの日々のことを忘れられなくて、新しい恋はまだできない。
思い出にして、忘れなければ生きていけないのに。
雨森零(あまもりしずく)という自分の名前を似合ってると言ってくれたのは、天音が初めてでその思いが、僕を生かしてくれている。
「どこにいるの? 」
もう、会えない。
そう告げて消えた天音の面影を今でも求めてる。
もうすぐ、夏がやってくるんだから、
早く見切りをつけなくちゃ。
バイト雑誌をめくりながら、ため息をつく。
テーブルの上に置いたグラスが汗をかいている。飲み干して、寝転がった。
いつしか落ちた眠りの中、初めての夜の夢を見た。
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