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第1話
世界が闇に侵食され
血を糧とする闇の帝王が統治するこの世
東の果ての小さな島国から
一人の少年が贄として帝王に献上された
身に纏うのは純白の薄衣のみ
鐡の枷を嵌められた手足は頼りなく、少年の首にはまるで黒薔薇が絡みついている様な痣があった
その痣こそが贄の証である
待ちに待った贄だ
自然と帝王の艶やかな唇が弧を描く
「面をあげよ」
帝王は傅く少年に告げた
しかし少年は憐れに身を震わせるのみ
「面をあげよと云ったのが聞こえぬのか?」
帝王の声が先程より低くなった
それを鋭敏に聞き取った少年は、ゆっくりと玉座を仰ぎ見た
帝王に向けられたその瞳は深紅であった
自身と対になるその瞳に、帝王は更に笑みを深めた
「来い」
少年は震える脚で立ち上がり、幾度も転びながらも帝王の元に傅いた
その身を抱き上げ、帝王は外套を翻し玉座から消えた
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