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番外編 口下手な帝王②
豪奢な寝台の上、少年は独りさめざめと泣いていた
夜明けを迎えても帝王は少年の前に姿を現さなかった
こういったことは今までになく、少年は悲嘆にくれた
「何故泣いている」
シーツの上に落ちた涙が乾ききる頃、帝王は現れた
「陛下……」
帝王は懐から包みを取り出し、少年へ差し出した
「これは…?」
「開けてみろ」
少年は恐る恐る包みを解いた
「……ちょこれぃと?」
帝王は艶々とした猪口齢糖を一粒少年の口に運ぶ
反射的に開いた少年の口内に、ふくよかな甘みが広がる
「やっと喰ったな」
帝王の表情は心做しか和らいでいた
「あっ……ありがとう…ございます」
「ああ」
帝王は少年の華奢な身体を抱き寄せる
少年の目縁に残っていた涙が、帝王のシャツに吸い込まれていった
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