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真実
ブレーキの効かない身体は熱を纏ったまま、俺達を快楽の淵に落としていく。
喘ぐ声に、迸る汗に、重なる唇に。
どこを触っても色めかしく反応するいやらしい身体に、俺はもうすっかり溺れてしまった。
怒張した塊を後孔にぴたりと当てると、しなっていた身体に力が入り、怯えたような顔をした。
慣れているのではないか?
何度もココに“誰か”を受け入れたのではないのか?
黒い嫉妬に塗り潰された心のまま、楔を推し進めていく。
泣きながら息を吐き、俺を受け入れる健気な姿に、さっきまでの汚い心がいつの間にか消えていた。
お互いの下生えが擦れ合い、やっと一つになれたと悟った時、どうしようもなく愛おしい気持ちが溢れて「愛してる」としか言えなくなってしまった。
心地良い声は既に掠れて、苗字ではなく俺の下の名を呼び、躊躇 いもなく俺を受け入れている。
そして…数え切れない抽挿の末に、俺達は同時に達した。
意識をなくした美しい身体を清めて、隣に潜り込んで抱きしめた。
もう、これで俺のものだ。
誰にも渡しはしない。
安堵と満足感で、俺は程なく深い眠りについた。
真夜中…
目を覚ました白瀬は、隣で熟睡する若い獣の顔を見つめていた。
ふと、自分の身体を見ると薄明かりに浮かび上がる、肌に散らされた赤い花びら。
腰は重だるく、まだ後孔には何かが埋め込まれている感じがした。
途轍もない幸せな気持ちに満たされて、また布団を被り、静かに寝息を立てる恋人となった男の胸に擦り付き、そっと目を閉じた。
翌日、香ばしいベーコンとコーヒーの香りで目が覚めた大輔は、慌てて飛び起きると、キッチンでくるくると動く愛おしい恋人を見つけた。
「おはよう…ございます…」
「おはよう。勝手に冷蔵庫を漁った。ごめん。
パンも焼けてる。
好みが分からないから…ごめん。」
「ううん、ありがとう。かちょ…いや、暁人。」
名を呼ぶだけで真っ赤になる初心な恋人の頬にキスを一つ送った暁人は
「夕食…後で作りに来てもいいか?」
とはにかみながら尋ねると、破顔した大輔にキスされた。
自宅に帰り画面をタップする。
呼び出したのは『赤石達也』。そう、人事部の。
「…あ、今いいか?
お陰様で。恥ずかしい朝帰りだよ。
え?あぁ、入社式で目を付けてから3年待った甲斐があったよ。
人事を掌握するお前のお陰だな。
でも、俺だってお前の時に協力したんだからお互い様だろ?
そう。後でまた晩飯を作りに行く。
ふっ。何とでも言え。
じゃあな。」
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