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12-2 その後のあれやこれ

 ランセルの奴が「誓いの証しは私の好きにしていいですか」と息巻いて聞いてきた。俺は拘りもないし、動くに邪魔にならなければいいと言ってしまった。  そうして当日出来てきた物に、俺は引きつる事になった。  よりにもよって首輪だ。獣人の俺に、首輪だぞ。正直あの場で焼き殺そうかと思った。  だが流石に、公衆の面前で妻が夫をくびり殺すのはどうだ。しかも当人達の結婚式だ。嬉しそうにしているコイツに殺意を向けながら、俺は屈辱に耐えるより他になかった。  当然その夜、俺は散々にランセルをなじった。裸に剥いて簀巻きにして転がしてやれば、「だって、私は貴方に首輪を付けられて飼われたかったんですぅ」という謎の言葉を放った。バカかイカレトカゲ、ドン引きだ!  エグエグと泣く奴を一晩放置した俺は、まさかの王からの土下座で許さざる得なくなった。「再教育しますのでどうか今後も」と言われたが、アレの再教育は不可能だ。  最近、すっかり鞭の使い方が上手くなったな。再教育は無理でも、調教は可能だ。まさか竜を調教する事になるとは思わなかったが。  何にしても、俺達夫婦にとっては通常運転だ。 「ねぇ、奥様」  隣に並ぶランセルが、軽く俺の腕を引いて呼ぶ。  結婚して、コイツは俺を人前で『奥様』と呼ぶようになった。仕事では『グラースさん』なのだが。似合わないから止めろ。 「なんだ?」 「マコトさんとユーリス、幸せそうですね」 「そうだな。いい式だ」 「…あの、それで、ですね」  なんだか歯切れが悪い。視線を向ければ妙に恥ずかしそうにしている。  こういう時のコイツはダメだ。ネジがゆるゆるで何を言い出すか分からない。 「もうそろそろ、2人目とか……ダメですか?」  チラリと上目遣いに見つめるランセルは、もの凄く縋るように言ってくる。いや、上目遣いも何も身長大して変わらない。  ふと、俺は幸せそうに笑うマコトとユーリスを見る。それを見ると、僅かに胸の奥も温かくなる。俺の手をそっと握るランセルの手もまた、温かい。 「…欲しけりゃちゃんと口説けよ、ランセル」 「! はい、グラースさん。愛しています」  まったく、バカの一つ覚えのように言いやがる。  俺は穏やかに笑って、その手を強く握った。 END

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