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第1話

「なんでこんなことになってるんだよ? 元に戻せよ!」 彼は足元の空き缶を踏みつけた。僕と彼の体が入れ替わったのは、偶然出会った魔法使いの弟子の練習相手として魔法をかけてもらったからだ。 「彼が素直になりますように」 と願ったらなぜかこうなった。失敗なのかと思ったがこれはこれで面白い。 「なんだよ、俺がお前になってどうするんだよ。このままじゃ……」 「このままじゃ不満? 僕はいいよ、君のこと全部好きだから。それとも僕の体は嫌?」 「……っ! ちがう、そんなんじゃない……」 いつもなら頭のてっぺんが見えるはずなのに自分より背の高くなった彼を見上げた。俯いて、爪が食い込むほど握りしめている手を取りそのまま引き寄せ抱きしめた。 「なにが嫌なの? ちゃんと言葉にして言って。なに言われても嫌いになったりしないよ?」 「……う……あっ、ちがっ……」 「言葉にできないならできるまで待つから」 張りのある髪を撫でながら顔を見上げると、僕の顔で真っ赤になりながら更に俯いて 「…お、お前の顔が見えないだろっ…俺はお前の顔を見ていたいんだよ……このままじゃ見っ!?」 僕は背伸びして頭ごと抱きしめた。 彼は僕の背中に手を回し思い切り抱きしめてきたから少し息苦しくなる。 「ごめん、言葉にすると嘘になりそうな気がしてたけど、ちゃんと言う。……大好き……。」 気がつくと苦しさが緩み、柔らかな猫っ毛が手に絡みついた。顔を上げた彼は、僕の顔を指でしっかり確認してから子どものように屈託のない笑顔を見せた。

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