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クラスメイト
隣に座る彼に気づかれないようチラチラと覗き見る横顔は、まつ毛が濃くてすっきり美しい。
「たのしみだなー」
「とりあえず着いたら朝飯食お!」
立つ人のいない電車は、線路から響く音と振動が体を心地よく揺すり肩を触れ合わせる。
「彼に触れたい」という願いが心から漏れていたのだろうか。声をかけてきた魔法使いの弟子に「願いをかなえますよ」と言われてついお願いしたのだ。
肩か触れている、これが願いをかなえたことになるのか……いや、これは違うだろ。このくらい、普通に歩いていても触れるだろ。
願い方を間違えたかと思っていると彼の頭が右肩に寄りかかってきた。
「どうした? おい、顔が……真っ青だ」
「……なんか、急に汗出てきた、気持ちわる……」
駅を出たばかりで電車が止まる様子はない。
通りかかった車掌に声をかけて次の駅までの時間を聞いた。
停車を待って僕より背の高い彼の肩を抱えて立ち上がる。思っていた通り華奢な体は簡単に支えられた。
電車を降りてとりあえずベンチに座らせ、自動販売機へスポーツドリンクを買いにいく。ペットボトルのフタをあけて手渡すと苦しそうにひと口飲んだ。
「ごめん、せっかく早起きしたのに」
横に座った僕に視線だけ向け、血の気の引いた真っ白な顔で次の言葉を出そうとしている。僕は頭に手を掛け抱き寄せて言った。
「僕こそごめん」
なんで謝られているのかわからないという顔をしているが、こんな形で触れることができてもうれしくない、ちゃんと言わなくては。
「僕は君に触れたかった、こうやって抱きしめたかったんだ」
「……」
「気分が悪い時に言う事じゃないってわかってる、でもこんな風にどさくさに紛れて触れてもうれしくない。だから、ごめん。こんな時だけど君のこと、抱きしめたいくらい好きなんだ」
僕はやっぱり卑怯者だ、顔も見ずに一方的に気持ちをぶつけている。
「……知ってた。そんなのわかってたよ」
「え?」
「僕も謝りたいことがあるんだ。昨日、魔法使いの弟子にお願いしたんだ。僕の好きな人から告白してもらえますようにって」
彼の顔を見ると、顔色が戻っている。手を握ると目を細めて微笑みながら握り返してくれた。
僕は顔が熱くなるのを感じながら両手で彼の手を包んだ。
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