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第11話 練習最終日

8月の初め。 毎週行われた盆踊りの練習が、三回目の今日、最終を迎えた。 「……あれ、って……」 二曲目が終わった休憩時間。 近くにいた女子が、公園の入り口を指差す。 その先を見れば、暗闇にぼんやりと、白いものが見えた。 よくよく目を凝らせば、それは、銀色の髪をした転校生。 輪の列から離れ、白川に駆け寄る。 「来てくれたんだね、白川くん。 ……良かった。実は、今日が最後の練習だったんだよ」 「……」 笑顔で話し掛けても、相変わらず白川は掴み所のない態度。 視線を何処に彷徨わせているのか。一体、何を考えているのか。 覇気のない瞳を小さく揺らし、この闇夜を灯す提灯のように、薄ぼんやりと佇んでいるだけ。 『気味が悪い』──ふと、女子の誰かがそう言っていたのを思い出す。 パチッ、パチッ…… スピーカーから、大きな雑音が漏れる。 それを合図に、輪を作りながらも雑談に花を咲かせていた人達が、次々とお喋りを止め、きちんと並ぶ。 「もうすぐ、練習始まるから。白川くんも一緒に……」 「──いいよ。見てる」 少し被せ気味にそう言い放った白川は、実にハッキリと、しかし声質は細く柔らかいままに、自分の意思を僕に見せた。 「……」 今、初めて、白川と会話のキャッチボールが出来たような気がする。 そう思ったら、これまで感じていた白川の印象が、ガラリと変わった。 よくよく見れば、白川は女みたいに美人で。細く長い前髪の隙間から覗く瞳に、色気さえ感じてしまう。 白い肌に映える、赤い唇。首筋から鎖骨にかけて露出した、白くて艶やかな肌。 「……そう」 着ている服は、恐らく20年前に流行していたもの。こういうのには疎いが、違和感なく着熟している辺り、リバイバルされたファッションなのだろう。 その私服姿に、他の皆と同じく新鮮さを感じながらも……ドクドクと、高鳴る胸の奥から黒い感情が沸き上がっていく。 「解った。でも、もし途中で参加したくなったら、遠慮なく入ってきてね」 「……」 その感情を、満面の笑みでひた隠す。

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