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第4話 初めてのキス
僕は週末、父といるのが気まずくて、隼人さんのアパートへ転がり込んだ。
マスターが言うには隼人さんは押しに弱いらしい。
僕が懇願するとコンビニで弁当を二つ買って、僕を部屋に入れてくれた。
友達の家にも遊びに行った事がない僕は少し緊張していた。
部屋は八畳ほどだったが、カーテンも無くシングルベットと簡易テーブルと引っ越したままの段ボール三箱部屋の角にあるだけでもっと広く感じた。
服とタオルが最低限、生活の動線に置いてあるという本当に殺風景を通り越した部屋だった。
これで引っ越して二年以上になるというから驚きだ。
インテリアには全く興味がないらしく、台所の流しに置いてあるサボテンだけが唯一家主の温もりを感じる点だった。
「お前どっか混じってんだろ」
躊躇なく僕の人種を聞いてくるところになんとなく好感が持てた。
お風呂を貰って、外泊する着替え一つ持ってこなかった事にひどく後悔していると、当たり前のように僕に寝間着を与え、ダンボールの奥からビジネスホテルにあるような使い捨ての歯ブラシを引っ張り出してくれた。
「あ、ありがとうございます」
隼人さんはノートパソコンを手にペルソナさんの、要は自分のピアノ伴奏動画を見ていた。
洗い立ての髪が垂れて少しだけ幼く見える。
「お前、外泊するって家族に連絡したのか?未成年に何かあったら捕まるのは俺なんだからな」
何か捕まるような事したことあるのかというほど、隼人さんは僕を面倒くさがった。
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