19 / 65
第5話 ペルソナの能力
カランカラン――。
「ねえマスター、隼人さんってどんな人?」
僕は学校帰りにほぼ毎日この喫茶店に寄りマスターの手伝いをするようになっていた。
「どうしたんだ急に。隼人と喧嘩でもしたのか」
僕が洗い終わったコーヒーカップをマスターは綿のタオルで必要以上に磨いている。
「何を考えてる分からないし、ピアノも全然教える気がないみたいだし」
「ははは。ちゃんと練習禁止を守ってるんだな」
この二人は何を血迷ったのか、「ジャズは即興がいい」とのことで本番まで僕にピアノの練習を一切禁止した。
「こっそり練習しちゃおうかな」
僕はマスターから借りたCDとこの店に流れるジャズを耳で覚えるしかなかった。
「隼人には嘘をつかない方いい。ついてもすぐバレるぞ」
マスターは几帳面にそのままタオル越しにカップを棚に戻した。
僕はマスターを見る。
「何か、あったんですか?」
次のカップに伸びる手を止め、マスターが「まあね」とから笑いをした。
気になった僕はさらにマスターを見つめ続けると、マスターは観念したかのようにため息をつき、話し始めた。
ともだちにシェアしよう!