32 / 65

第7話 仕返し

 隼人さんが真顔に戻って僕を見つめた。 歪んだりせず、驚いたよう様子もなく。眉がピクリとだけ上がりただ顔の角度も変えず目だけが僕をみていた。 その顔を見た僕は一気に血の気が引きた。 「あ、あの……ちが、なんかこれは……」 「痛ぇんだけど、ヘタクソか」 「ご……ごめんな……さ」  そう言いかけると急に口の中に生温い異物が押し込まれた。 「っう?」  見ると隼人さんの人差し指が僕の口に押し込まれていた。 差し込みながら残りの指で顎を掴まれて、人差し指が前後に抜き差しされる。 「……っう」  僕は思わず隼人さんの手を掴んで見つめる。 「人が情緒不安定な時につけ込むなよ」  僕はこの間のキスを思い出した。その時の指の感触を鮮明に覚えている。 差し込まれた隼人さんの指は少し塩辛い味がした。  人差し指が口内をかき回すように動き、舌底の下あごのくぼみに突っ込まれそのままグイッと引かれ身体ごと隼人さんの方へ引っぱられる。 「あっ…の……っんぐ…」  差し込まれた指が邪魔でうまく唾液が飲みこめない。 何が起きているのか理解できず、僕は隼人さんを見つめた。 「おい、指噛むなよ。もう一本入れるから」  くちゅりと音を立てて、次に中指が差し込まれた。 僕の口の中は二本の指でたちまち一杯になってしまう。 中が熱くうねっている。このヌルヌルして柔らかい感触を僕は知っている。

ともだちにシェアしよう!