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第9話 Christmas Eve Jazz session

クリスマス・イヴ――。 それはジャズセッション当日。 外は今にもホワイトクリスマスになりそうな雲行きだが、僕の胸中はそれどころではなかった。 本番に弱い僕は今までに感じた事のないアダルトな雰囲気に完全呑まれてしまっていた。 いつもガラガラな(というと失礼だけど)店内はいつの間にか満員になりそうだし、客層はマスターの友人が多いせいか年齢層がうんと高く、外国人もいる(という事はジャズファンの人かも)。 今まで経験してきたコンサートと年齢層が全然ちがう。 どの人をみても本格的にジャズを聴きに来ている人のように感じられて、ドレスアップをした外国人の老女がマスターと親しげにハグをしている。 一気に店の敷居がランクアップしてしまったようだ。 当日の衣装はシンプルに白のワイシャツに黒のパンツスーツそれだけでよかったものの、マスターとベースのブラットがさらに黒の蝶ネクタイを付けているだけで本格派に見える。 そしてマスターの代わりにカウンターに立つ隼人さんも似たような恰好に腰から長い黒エプロンを付け、まるでボーイのように慣れた手つきでドリンクを配っている。 流れるBGMの音量が会話を邪魔して、注文を頼む客の女が口許に手を添えヒソヒソ話をするように隼人さんの耳元に顔を近づけている。 隼人さんは微笑んで女に耳を傾ける。 聞こえてるくせに。 僕は二階の階段からそっと覗き込んでは場違いな自分の存在に消えてしまいたくなった。 できればこのまま家に帰りたい。

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