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chapter 05 [completely]
「名指しで君を指命しなかったのは少しでも村人達に罪悪感をもって貰いたかったんだが――どうやらぼくが思っている以上に彼らはずっとまともだったようだ」
セロンが遮光カーテンを開けると、松明を持った父様を先頭に、皆が列を成して押し寄せる姿が見えた。
「さて、君はどうしたい? 彼らと村へ帰るか――。ぼくといるか――。君が察している通り、ぼくはこの世の人間じゃない。あの世とこの世を結ぶ存在。時の管理者。いわば死神のようなものだ。当然、ぼくを選べば彼らの時間軸とは異なる世界で生きることになる」
どうしたいかなんて決まっている。だって僕はセロンを愛している。生まれてはじめて死にたくないって思った。僕の中でセロンが大きくなっている。離れたくない。
「セロンと一緒にいたいです」
「君の父上とは二度と会えない可能性だってあるんだ」
「構いません。ご迷惑ですか?」
「いや、迷惑なわけがない。ぼくこそどれほど君に会えることを心待ちにしていたか」
「っひゃ!」
僕の体が宙に浮いた。
僕はまた、セロンにお姫様抱っこをされたんだ。
見上げれば、オリーブの瞳が僕を見下ろしている。
セロンはやっぱり格好いい。
見惚れていると、セロンとの距離がずっと近くなった。
額、頬、それから唇に口づけが落ちてくる。
「愛しているよ、ウィル。だが困ったことに、どうやら今日も十分な睡眠を与えてあげられそうにない」
セロンは本当に困った様子で、うーんと低い唸り声を上げた。
END
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