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chapter 05 [tear]

 思い出すのは夢の中の出来事。  僕に向かって青白い腕が伸びてきたり、眠っている僕を見下ろしていたり……。  それって、それって。 (まさか!!)  最近見るようになった夢はお母様?  僕を殺しに来たのではなく、抱きしめてくれようとしていた?  見下ろしていたのは見守ってくれていたの?  今までずっと? 「ああ、お母様……僕、僕は……」  瞼が熱い。涙が止まらない。  ――わたしの可愛いウィル、どうか幸せになって。  ふんわりと僕の耳に届く。目を開ければ、そこにはもう、お母様はいなかった。  きっと愛していると伝えたかったのかもしれない。 『母親殺し』と自分を罵っていたからお母様は心配してくれたんだ……。 (ああ、お母様……)  お母様は僕を憎んではいなかった。ずっと愛してくれていた。  視界が滲む。涙が頬を伝う。だけどこの涙はとてもあたたかいもの。胸がじんわり熱くなる。しゃくりをあげて蹲る僕の頭を大きな手が撫でてくれる。  この手はセロンだ。彼の優しい仕草がまた、僕の胸を熱くする。

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