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chapter 05 [she is...]

「僕は『まだこちらの世界には来られない』って誰かと話していたじゃない!!」 「ああ、聞いていたのか。彼女と話していたんだよ」 「彼女?」 「もういいよ、入っておいで」  首をひねっていると、炎もないのにセロンの背後から白い煙がふわっと舞い、やがてそれは人の形になっていく……。 「貴女は――」  現れたのは、綺麗な黒髪の女性だった。 (あれ? だけどこの人、どこかで見たことがある) 「君の母親、ジュリエッタだよ」 「お母、様?」  セロンに言われて瞬きを繰り返す僕は、信じられない気持ちでいっぱいだった。  たしかに、僕はお母様に似ていると言われていた。黒い髪に長い睫毛。線の細い体。言われてみれば確かにそうかもしれない。  だけどこの女性が僕の母親だなんていったい誰が信じられるだろう。 「一度でいいから君を抱きしめたいのだとぼくの所に相談に来てね」 「お母様……?」 (本当に?)  尋ねれば、女性は静かに微笑んだ。

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