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chapter 05 [reason]
……わかってた。
セロンは僕の命を狙っていると判っていたハズだった。
だけどいざとなるとやっぱり悲しい。
キスなんて、してほしくなかった。
力強い腕のぬくもりも、知らなければよかった。
だって胸がこんなに苦しい。
涙が、溢れてくる。
ドアの前で立ち往生していたら、不意に視界が広がった。目の前にはセロンがいる。だけど悲しすぎて彼の顔を見ることができない。
「ウィル! 来ていたのか」
「僕は……」
そうだ。僕は罪人。殺されて当然なんだ。
誰かに殺されるのなら、セロンがいい。
そう思うのはきっと、僕がセロンを愛してしまったからだ。お姫様抱っこされてドキドキしたり、キスされて体が熱くなったのはそういうこと。
だけど彼は違う。僕なんかを愛しているんじゃない。キスに深い意味なんてない。ただ魂が欲しかっただけ。この想いは報われない。それでも僕は……。
「セロン、僕は貴方が好きです。たとえ貴方の目的が僕の命であっても、それでも僕は――」
「ウィル?」
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