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鉢合わせ
「何、俺が頼んだの、食べたくないって?」
葵が席に戻ってきて、すぐ、二つ目のイチゴパフェがテーブルに届いた。
「いや、そういうわけでは・・・」
甘いものはどうも苦手で。
半分、蓮が残したものをやっと片付けたのに、お前は鬼か‼
「アイス溶け始まっているよ」
頬杖をついて、悪戯っぽく口角を吊り上げて、ジロジロ見る葵の視線が、突き刺さるように痛い。
仕方なく、スプーンを手にし、一番上に乗ってるイチゴからまず一口。
それから、イチゴソースがたっぷり掛かっているバニラアイスを口に運んだ。
「真生、美味しい⁉」
「お前のお陰で、甘いものが好きになりそうだ」
「それはどうも」
嫌味を言われても、葵は、涼しい顔をしている。蓮は、彼の隣にちょこんと座り、携帯を借りて、好きなアニメを見せて貰っているから大人しい。
「なぁ、真生。今度、蓮と一緒にどこかに行かない⁉」
「なんで、お前となんか。彼女と行けばいいだろう」
葵が大きいため息をついた。
「真生は、男心が分かっていない。だから、奥さんに逃げられたんだろ?」
ん⁉今、何て言った?
男心⁉女心の間違いじゃないか。
「まぁ、一生掛かっても理解できないだろうな」
不意に葵の手が伸びてきて、アイスを食べようとしていた俺の手首を掴み、そのまま自分の方へと向けさせた。
つまり、俺が、食べさせる格好になった。
「パパ、えんちぉセンセとらぶらぶ」
「ラブラブしていないから‼」
「連のパパは可愛いな」
「れんの?うん、かあいい」
「葵さぁ、三十五のしがないおっさんにいう台詞か?」
蓮がかあいいを連呼し始め騒ぎだした。
収拾が付かなくなる前に止めさせないと。
大急ぎで、残りのアイスを口に押し込んだ。
「なんだ、甘いもの好きなんだ。次、何食べる?チョコパフェにするか?」
「もう勘弁してくれ」
「なんで?」
葵がだんだん悪魔に見えてきた。
なんでこいつは、笑顔で人をからかうのが好きなのかな?
俺は気が付かなかった。
迎さんが、鬼の形相で、俺らのやり取りを見ていたということに・・・。
全く知らなかった。
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