13 / 58
蓮の心、親は知らず
今日もおはようございます!と、元気に給食の米飯と、パンを小中学校に配達する。
いつもと違うのは、隣に蓮がいない事。
今朝、蓮を幼稚園に預けてから、出勤するのに用意に手間取り、バタバタしてたら、チャイムが鳴って。誰だ、この忙しい時に!!とムカつきながら、玄関のドアを開けたら、葵が立っていて吃驚した。
「蓮、園長先生と一緒に行くよ」
「わぁ~~い!!えんちぉうセンセだ~~!!」
蓮は元気いっぱいに葵の許に駆け込んだ。
「忙しいのに悪いな。わざわざ迎えに来てくれて」
「いいよ、別に。行くところ一緒だし。それに、共働き夫婦は、お互い助け合わないと・・・なぁ!?真生」
「はぁ?俺、葵と夫婦になった覚えないぞ。第一、男同士だし・・・。頭大丈夫か?」
葵はくすくすと笑っていた。
朝から揶揄わないでくれ。頼むから。
「葵、これ、蓮の弁当と、荷物」
黄色いリュックサック型の園鞄と、着替えが入った手提げバックを葵に手渡した。
「真生の手作り弁当!?いいなぁ、俺の分も頼もうかな?」
「残念ながら、俺が作れるの卵焼きぐらいだ」
「なんだ」
「すまんな、期待に沿えなくて」
「いいや別に」
昨日あんだけ意地悪され、文句の一つでも言ってやろうか・・・
そう思ったものの。
「息子を頼む」
蓮の父親として、園長である葵に頭を下げた。
蓮がいないと静かすぎて、逆に落ち着かない。
考えるのは息子の事ばかり。
新しい環境にはなかなかなじめないだろうけれど、先生の言う事をちゃんと聞いてるかな?
逃げずにいるかな?
泣かずにいるかな?
クラスのお友だちと喧嘩してないかな?
ここまで来たら、もはや親バカだ。
いつもの様に、最後の配達先は、大澤小学校。
「息子さん、幼稚園に!?良かったですね」
「親は寂しいけれど、揉まれて強くなるのも、息子さんの為になりますよ」
調理員の二人と会話をしていると、後ろを迎さんが颯爽と通り過ぎて行った。
「じゃあ、失礼します」
二人に頭を下げ、運転手席に戻ると、紙袋を手にした迎さんが待っていた。
「おはようございます。昨日は、ご馳走になりありがとうございました」
「いえ、僕の方こそ・・・それよりも、宮尾さんでしたっけ!?彼とはどういう関係で・・・すみません、立ち入った事を聞いて・・・」
なんか、そわそわ落ち着かない。
目も泳いでるし。
いつもの彼とは違う。
どうしたんだろう?
ここは、正直に言うべきだろう。別に、変な関係じゃないし。
「彼、宮尾葵といって、昨日言っていた通り、幼馴染みです。産まれた時から一緒で・・・」
「そうなんですね。良かった。」
迎さん何故か胸を撫で下ろし笑顔を見せた。
ともだちにシェアしよう!