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波乱のきっかけはお袋

「あら、あなた、先日の・・・迎さんでしたっけ?」 「はい、迎涼太と申します。その・・・息子さんと、お付き合いをさせて頂いてます」 「そうなんですか」 玄関先で、お袋が出迎えてくれた。 さぞかし吃驚するだろうと、予想していたものの、至って普通で・・・。 「立って話しも何だから、中どうぞ」 笑顔で、涼太を家の中に招き入れてくれた。 リビングに一歩足を踏み入れるなり、俺と、涼太の足が止まった。 だって、いるはずのないもう一人の彼が、親父と並んで、ソファーに座っているもんだから、腰を抜かすくらい驚いた。 「なんで、葵がここにいるんだよ・・・」 「おばさんから頼まれたんだ。息子が会わせたい人がいるっていうから、一緒に会ってくれないかって」 「そうなんだ」 非常に気まずい空気が流れる中、葵と向かい合う形で、涼太と並んで腰を下ろした。 蓮は、涼太に抱っこして貰うか、葵に抱っこして貰うか、かなり悩んでいる様子だった。 悩みに悩んだ末、涼太の膝の上に登っていった。 「なかなか他の人に懐かない孫が、こんなにもあなたに懐いているとは、正直いって驚きました」 驚きを隠せない親父に、涼太は、背筋をぴんと伸ばし、自己紹介をしていた。 「息子がこんなにもモテるなんて、母さん鼻が高いわ」 涼太と葵が睨み合い、まさに一発即発の状況にも関わらず、お袋は、いつもの様に能天気だった。 「ちょっと待ってくれ・・・こんなにもっていう事は、どういうことだ?」 「あら、やだ。分りませんか?葵君も、うちの真生の事が好きなんですよ」 「そうなのか」 またまたビックリの親父に、葵は、口を固く閉じて頷いていた。 「いっそのこと、四人で一緒に暮らせばいいのよ。蓮くんの為にも、みんなで仲良くすればいいのよ」 空気を一掃する、お袋の爆弾発言に、蓮以外、全員固まった。

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