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波乱のきっかけはお袋!!
「涼太は、涼太だろ・・・」
しばしの沈黙の後、俺の口から自然とその言葉が出た。
「俺の親父や、お袋も同じ事をいうと思うよ。ありがとう・・・一番辛いの涼太なのに、話してくれて」
「本当に僕でいいの!?」
「何度も言わせるな。俺がいいんだから、いいんだ」
涼太の頭を撫でてやった。
すると嬉しそうにはにかんでくれた。
やっぱり、彼には泣き顔よりも、笑っている顔の方が一番似合う。
来た道を戻り、駐車場へ。
緩やかな昇り坂に息を切らしていると、彼にまた笑われた。
「真生、大丈夫?」
「やっぱ、年のせいかな?」
ボソッと呟いた俺に、今度は腹を抱え笑い出した。
何がそんなにおかしい?
「まだ、まだ、若いよ真生は」
彼なりに励ましてくれた。
「りょうにいに~~!!」
車の所で、蓮が手を振って待っていてくれた。
俺じゃなく、やっぱり先に出るのは涼太の名前。
「未紗さん、ありがとうございました」
「いいえ、私も、蓮くんと一緒にいれて、すっごく楽しかったです」
「また、遊ぼうね」そう、息子と指切りげんまんをして、近くに駐車してあった、黒色の乗用車の許へ向かった。
コンコンと、窓を叩くと、運転手席から、背の高い茶髪の青年が下りてきた。
「未紗の夫の、厚海です。初めまして・・・」
「佐田真生です」
初対面同士、ぎこちないのは当たり前。
まさか、妻の兄の恋人が男性だとは、思いもしなかっただろう。
「妻と、義兄さんからあなたの事は聞いていましたから、こうして、お会いする事が出来て嬉しいです。聞いていた通り、優しくて、真面目そうな方で良かったです。今度こそ義兄さんを幸せにして下さい」
鼻と耳にピアスをして、派手な格好をしているものの、そんな見た目とは違って、中身は、律儀で真面目そうな若者だった。
照れながらも、未紗さんと手を繋ぐ様は何とも初々しかった。
「二人は、もう、二年以上同棲しているんだけど、僕に遠慮して、籍を入れようとしなかったんだ。未紗、お兄ちゃんは、真生と幸せになるから、厚海さんといい加減、籍入れたら?」
「うん!!」
厚海さんも、未紗さんも、零れるような笑顔で、蓮の頭をいっぱい撫でてくれていた。
よほどの子供好きなんだろう、二人共、目尻が下がりぱっなしだった。
そんな二人と、駐車場で別れ、蓮と涼太を連れ、久し振りのわが家へ向かった。
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