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八
嬉しくてヘラっと顔が緩んだ。
「嬉しい」
口に出してしまって恥ずかしくなった。
目を逸らす。
「お前やっぱ可愛い…飽きねぇな…いちいち新鮮。俺にそんな可愛いことしてくれんのお前だけ…お前だけは手放せないな…」
ハッとして顔を上げる。
いま、すごいこと言われたよな、俺!?
あー…どうしよう。
嬉しい。やっぱりセフレなんだって思うけど、それでもいい。
「成海っ!」
抱きついちゃった。
肩に顔を埋める。立ってたら出来ないことだ。
成海も気をよくして背中に手を回してくれた。
何かほっとするな。
密着しているから余計そう思うのかもしれない。
…ん、あれ?
股の間が何か…あ。
「な、成海っ何で」
「ん、悪い…気にするな」
本当に気にすることなく俺を抱きしめたまま。気にならないのかな。
「本田、先出てろ」
言われて服を着てリビングに入る。
冷蔵庫を開けて買い置いていた炭酸を飲む。
すっきりする。体が重いのは変わらないが。
ソファーに座って目を閉じればすぐ眠気に襲われ眠ってしまった。
目が覚めたら自分の部屋で寝ていた。
ソファーだったのに。
体を起こして立ち上がろうとしたが無理だった。
「いってぇーっ!!!」
尻と腰が後遺症のようにいまさら痛みだした。
「悪かったって」
声がして顔をあげて照れる。
成海、まだ居てくれたんだ。
じゃ、運んでくたのは成海?
「…気持ちよかったから、もういいよ」
頭をナデナデされてニヤける。
いつまで居てくれるんだろう。
もう少し、まだ一緒にいたい。
「成海、いつ帰るの?」
「ん…暗くなったら」
あぁ、成海が俺の部屋にいる。
成海が俺の部屋に!
成海、成海、成海、成海、成海、成海…好き。
言いたいけど言えない。
こんなこと滅多にないかもしれないのに。
言わなきゃ後悔するかも。でも、言ったら後悔しないか?
危ない橋は渡りたくない。
成海の側にいれるなら、このままでも構わない。
成海はケータイで頭脳パズルをしだした。後ろから覗くが、1つ解くのに5分もかからない。
頭いいんだ…。
そういえば、俺、成海のこと何も知らない。
誕生日とか、いままでのこととか。
…成海のことが知りたい。
不意に時計を見て、立ち上がる。
「帰る…無理すんな。…明日な」
「うんっ、明日!」
成海が帰ったあとはあの静かさだけがそこにある。
この家、嫌いだ。
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