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嬉しくてヘラっと顔が緩んだ。 「嬉しい」 口に出してしまって恥ずかしくなった。 目を逸らす。 「お前やっぱ可愛い…飽きねぇな…いちいち新鮮。俺にそんな可愛いことしてくれんのお前だけ…お前だけは手放せないな…」 ハッとして顔を上げる。 いま、すごいこと言われたよな、俺!? あー…どうしよう。 嬉しい。やっぱりセフレなんだって思うけど、それでもいい。 「成海っ!」 抱きついちゃった。 肩に顔を埋める。立ってたら出来ないことだ。 成海も気をよくして背中に手を回してくれた。 何かほっとするな。 密着しているから余計そう思うのかもしれない。 …ん、あれ? 股の間が何か…あ。 「な、成海っ何で」 「ん、悪い…気にするな」 本当に気にすることなく俺を抱きしめたまま。気にならないのかな。 「本田、先出てろ」 言われて服を着てリビングに入る。 冷蔵庫を開けて買い置いていた炭酸を飲む。 すっきりする。体が重いのは変わらないが。 ソファーに座って目を閉じればすぐ眠気に襲われ眠ってしまった。 目が覚めたら自分の部屋で寝ていた。 ソファーだったのに。 体を起こして立ち上がろうとしたが無理だった。 「いってぇーっ!!!」 尻と腰が後遺症のようにいまさら痛みだした。 「悪かったって」 声がして顔をあげて照れる。 成海、まだ居てくれたんだ。 じゃ、運んでくたのは成海? 「…気持ちよかったから、もういいよ」 頭をナデナデされてニヤける。 いつまで居てくれるんだろう。 もう少し、まだ一緒にいたい。 「成海、いつ帰るの?」 「ん…暗くなったら」 あぁ、成海が俺の部屋にいる。 成海が俺の部屋に! 成海、成海、成海、成海、成海、成海…好き。 言いたいけど言えない。 こんなこと滅多にないかもしれないのに。 言わなきゃ後悔するかも。でも、言ったら後悔しないか? 危ない橋は渡りたくない。 成海の側にいれるなら、このままでも構わない。 成海はケータイで頭脳パズルをしだした。後ろから覗くが、1つ解くのに5分もかからない。 頭いいんだ…。 そういえば、俺、成海のこと何も知らない。 誕生日とか、いままでのこととか。 …成海のことが知りたい。 不意に時計を見て、立ち上がる。 「帰る…無理すんな。…明日な」 「うんっ、明日!」 成海が帰ったあとはあの静かさだけがそこにある。 この家、嫌いだ。

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