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第14章 おじゃま虫2
「えっ……なんのこと?」
ぎこちない表情のまま日向は訊き返した。
「碓氷くんが、わざと失敗ばかりして西海さんに意地悪をしている姿を『見た』っていう子たちがいるの。まさか、碓氷くんがそんな人だなんて思わなかったな……人畜無害そうな顔をしてたちが悪い。人って見かけによらないのね……」
普段、光輝の取り巻きをやっている女子と希美は仲がいい。光輝のせいで誤解されては困ると日向は口を開きかけるが――「なわけねえだろ」
「何よ、朔夜くん。碓氷くんのことを庇い立てするの?」
「庇い立てじゃねえよ。日向は人に意地悪なんかをするやつじゃねえ。むしろ、光輝の金魚のフンをやっている連中と一緒にいる坪内さんのほうが、意地悪なんじゃねえの?」
「……そうかなー。他の子たちだって口を揃えて言っているわ。碓氷くんが朔夜くんに、しつこくつきまとってるって」
「だったら絹香や衛に訊けばいい。日向が俺につきまとってるんじゃない。俺が日向のそばにいさせてもらってるだけだ」
悔しそうに希美は赤い唇を嚙んだ。
そうして朔夜は自分の腕を摑む希美の手を放し、日向の手を握って出入り口へ向かう。
「ちょっと待ってよ、朔夜くん!」
「悪い、坪内さん。俺の気持ちは変わんねえ。後ないと思いたいけど、こいつに手ぇ出したら女でも容赦しねえから」
「っ!」
「さ、さくちゃん……」
日向は困惑した状態で自分の手を握る朔夜の横顔を見つめた。
「行くぞ、日向」
「う、うん」
そのままふたりは廊下に出て、階段の手前まで進んでいった。職員室から調理部担当の教師がやってくる。
「あっ、よかった。ふたりとも仲直りしたんだ! 片付け、ありがとね」
手をつないでいるところを人に見られて、慌てて日向は朔夜の手を放した。
「はい、先生のおかげで、日向と仲直りができました。ありがとうございます。じゃあ、帰りの会があるんで俺ら、教室へ帰りますね」と朔夜は笑って、階段を上っていってしまう。
日向はぼうっと視線をさまよわせてマフィンを抱えた状態で突っ立っていた。
「いいの、日向くん? 朔夜くん、もう行っちゃったよ」
「えっ!? あ、すみません。先生、ありがとうございました。さ、さくちゃん……!」
そうして日向は朔夜の後を追いかけたのだった。
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