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第1話
暗い闇の中、息苦しい。鼻や口で思い切り空気を吸おうとするが、上手くいかない。肺がしぼんでいる。空気を送り込まなければならないのに、できない。
自分が自分ではない状態がずっと続いている。
手足は重く、動作は思うようにいかない。身体中がきしんで、指を曲げるだけで苦痛だ。
長い間、泣いていた。何に泣いているのかもわからないくらい。
このまま自分は消え去ってしまうのだと思っていた。
消え去ってしまいたい。こんな苦しい中で生きていることはできない。
そう思い続けていた。
長い時間がたち、広瀬は灰色の目を開いた。
ここはどこだろう。
目に入ったのは白い壁と白い天井だった。病室のようだった。
腕には点滴が刺さっている。鼻にはチューブが入れられ酸素が送り込まれていた。
音はなく静かだ。
何もない部屋だった。
広瀬は点滴が刺さっていない方の手をあげて目の前に持ってきた。細く痩せてしまっている。
こぶしを握ってみたが力はほとんどでない。
目の上にあげているのもつらくなり、ベッドに腕を落とした。
部屋にはカレンダーも時計もなく、窓には厚い白いカーテンがかかっていて外が昼なのか夜なのかもわからなかった。
起き上がろうとしたら小さいブザーのような音が鳴った。
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