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第2話
男が数人やってきた。白衣で、西欧系の男や南米系の男がいる。
彼らは静かな口調で話しかけてきた。
英語だった。単語は少し理解できるが何を言っているのかさっぱりわからない。
外見は日本人の男もいたがその男の言葉も英語だった。広瀬が言葉を理解できないことがわかると、困惑していた。
しばらくその病室にいて、白猫に連れられて、飛行機に乗ったことまでを思い出した。それからこの病室までのことは何も思い出せなかった。
この病室のようなところにどれくらいの時間いたのか全くわからない。
だが、興味もわかなかった。
訪れる白衣の男の中に白猫がいた。彼は広瀬に優しく話しかけてきた。
白猫というのは広瀬がつけたあだ名だ。猫なで声で話をする白衣の男だったので内心そう呼んでいたのだ。本名は菊池という。
やってきた菊池は、ここは自分も出資している会社の施設で、広瀬は安心してここで過ごせばいいと言った。心配することも悩むこともない。ここでは君は最重要人物なんだ、大事にするよ、と菊池は言った。
広瀬は、彼に返事ができなかった。
反応することがおっくうで、自分の身体の重みが、頭の動きにもつながっていて、全てが重く、動きがは鈍く、感覚は苦痛でしかなかった。
なにもかも投げ出して、終わりにしたくなった。
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