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第100話

東城が言葉を切ったところで、宮田は再び竜崎に顔を向けた。 竜崎は、一通り東城が話し終わったことを確認し、ブリーフケースから書類を束ねたファイルを取り出した。 「光森は、病院で意識が戻った後、そう時間をおかずに、勤め先の会社の人間と会っている」と竜崎は書類を見ながら言った。「会社は日本でオフィスを構えているわけではないらしいが、連絡員のようなものは数名日本にもいるらしい。今回病院で会った人間については光森は初対面だと言っていた」 「その会社の人が、光森に広瀬を探させているってことですか?」と宮田は言った。 竜崎はうなずいた。 「そうだろう。光森の会社について今調べているが、相当いわくがありそうなベンチャーだ。出資元は民間企業の隠れ蓑をかぶったどこかの国の機関らしい」竜崎は、静かな口調だ。 「それで、広瀬に依頼ってなんですか?」と宮田が聞いた。 竜崎は言った。「広瀬に、菊池をおびき出す協力をしてもらいたい」 「おびき出すって?」 「菊池が、日本に帰国したら、我々は彼を逮捕する。菊池が盗んだのは、記憶のデバイスの設計図だけではない。彼が勤務していた警察庁の研究結果も持って逃げている。菊池も、日本に帰国したら危ないことは理解しているだろうから、そう簡単には、帰国したりはしない。だから、広瀬が菊池を呼び寄せる仕掛けを」 東城が竜崎の話を遮った。「おい。そんな話じゃなかっただろう。広瀬に、確認したいことがある、ってだけだったじゃないか」 苛立ちを隠さない言葉にも、竜崎は平然として話を続ける。 「菊池と彼の会社にとっては、広瀬は、かなり重要人物だ。記憶のデバイスの実験の成功を証明している。それに、広瀬は彼らの話を聞いている。もし、広瀬に全てを証言されたら、彼らの会社は終わりだ。だから、必ず探しに来る。しかも、彼は自分で来るだろう。広瀬は、幼い頃から彼の暗示にかかっているから、彼は自分が広瀬を操れると思っているはずだ。菊池にとって、広瀬は大事な被験者だ。必ず、取り返しに来る」

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