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第1章②

「なんだ、幼なじみって斗紀雄くんの事だったんだ」 次の日、本人からよろしくという連絡が来て、廉は安堵した。翔太の事だから、初対面の人間を連れては来ないと思ってはいたが。 高瀬 斗紀雄は一年前、翔太と地元の居酒屋で飲んでいた時、偶然店で会った。斗紀雄と廉は以来、よく飲みに行く仲になり、正直に言えば翔太より会う頻度は多い。斗紀雄は翔太と小学校からの同級生で今も仲が良く、斗紀雄曰く『心の友 』らしい。 斗紀雄は引き締まった筋肉質な体つきをしているが身長は廉よりやや低く、顔立ちも普通の男ではあるが、おおらかで気の優しい兄貴肌である。職業は保育士と聞いた時、なんとなく納得してしまった。 「酒、買って持っていくから駅まで迎えに来てね、廉ちゃん」 今まで、中性的な顔立ちの廉にとって、ちゃん付けは嫌でしかなかったが、斗紀雄から呼ばれるのは嫌ではなかった。それも斗紀雄の人柄だろう。 OK!と、返信しスマートフォンを机に置いた。 この時はまだ、楽しみで心がいっぱいになって、年甲斐もなく鼻歌まで歌ってはしゃいでいたのに、まさかあんなことになるなんて。

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