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第6話
「さっきの告白……本当に本気だったんですか?」
どこか恐る恐る問い掛けた。つまり「貴方は俺が本気で真っ直ぐに好きなのか?」という意味だし。
「会議のとき、皆の前で言った告白か?」
そう訊かれた弓倉が頷くと、大嶺も力強く頷いた。
「そうだよ。俺はあんな冗談は言わない」
「それは知ってますけど! あんな突拍子の無い告白するひと、ってのは知らなかったです」
思わず弓倉が笑うと、大嶺は怪訝そうな表情を浮かべた。
「突拍子、って……噂ではなく事実だ、ってはっきりさせておきたかったし。それで田畑には怒られたけど……もしかして、お前も怒ってるのか?」
こっちを向いた大嶺の顎に指を添えた弓倉は、まずその綺麗な顔をまじまじと見つめて。
「ただ部活内のトラブルを避ける為の言葉だったら、怒るというより哀しいですけど」
きょとん、とした小動物のような瞳をまたしばらく見つめると、指に少し力を入れて、そっと弓倉の唇を大嶺の唇に合わせた。
「本気の告白なら、もの凄い嬉しい、です」
唇を離すとゆっくりと告げるが、大嶺は何も応えない。
「あの……大嶺センパイは本気で、俺の事が好き、なんですよね?」
何度も確認するのもみっともないが。このひと相手だとどうも不安だ。
すると後頭部を大嶺の両手で捕まれ、弓倉はぐいっと引き寄せられた。
「そういうお前は、どうなんだよ」
耳元で囁く大嶺の吐息と口調は熱い。
「えっ?」
疑問と驚きの反応を見せた弓倉の耳に、じれったそうに言葉を注ぎ込む。
「いきなり、合宿中の遊びみたいに告白してくるし。俺が夜の練習辞める、って言ったら、お前も案外あっさり辞めるし」
それって……もしかして、このひとも不安だったのか?
俺の想いを疑って、ひとり苦しんでいたのか?
あぁ、やっぱりヤバイなぁ。このひとの言動は。
「俺も、本気で、大嶺センパイが、好きですよ。バスケットマンとしても、恋愛対象としても」
大嶺の頬にキスをすると、きっぱり告げた。そして唇にキスの方向を移す。
さっきの軽い口付けとは違う深い交わりに、大嶺は苦しそうに吐息を漏らすが。それを離したくない弓倉は、大嶺の身体を支えながら寄り掛かかる。
正直練習試合に負けたのは、俺が失恋からやる気が落ちて、実力を発揮出来なかった所為もある。
でもまたこうして、大好きなひととふたりで夏の夜を過ごせるんだ。
長い時間くっつけ合っていた唇を名残惜しく離すと、弓倉は顔面の笑みを見せた。
「今度の試合は、絶対、ぜーったいに神柳高校の勝利ですよ!」
「対戦高校、今日やった所よりも強豪校なんだぞ?」
突然試合の話に変わって、大嶺は首を傾げたが。
「でもまぁ、勝たなきゃいけないしな」
視線を逸らして真剣に呟いた。自身の噂もあり負けた事も堪えているのだろうな。そんな大嶺の主将としての一途さもどこか可愛くて、弓倉は再びキスをねだった。
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