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第57話

しかし、そんな痛みなど麻痺してしまうほど、アキラの事が… アキラの言葉にもショックを受けるみずき。 自分がふがいないから… 「…っ」 アキラの訴えはやはり聞かれることはなく流される。 「そうだな…サクヤ、熱もあることだし…少し濡れてみるか?」 タツは、熱っぽいアキラの身体に触れながら… 発熱のためか潤んだ瞳を覗いて言う。 「……」 そんなタツに視線を合わせたくなくて、そらしたままタツの動きを我慢する。 本当は姿を見るだけでも嫌な相手… そんな奴に好きにされたくないけれど… 諦めは早い方だから… こんなこと、BOUSではよくあった事… ヤタの言う通り、少し我慢していればいいだけ… 終わればまた忘れてしまえるのだから… そう、自分自身の心に言い聞かせる。 タツはニヤニヤ笑ったまま… 片手で持ってきた袋を探っている。 「…これが丁度いい」 取り出したのは、一升瓶に入った日本酒… その蓋を軽く開け、一口ぐびっと飲むタツ。 そしておもむろに、その日本酒をアキラへ頭からすべて浴びせかける。 「ぅ…冷ッ!」 急な行動に身体が震えるアキラ。 栗色の髪の毛先まで酒で濡れて雫が滴る。 アキラへ酒の匂いがまとわりつく… 「アキラッ!タツ、やめろッ」 みずきも叫ぶが… 「やめねーよ、フン、なかなか、うまそうだ…」 酒で濡れたアキラの綺麗な身体を舌で舐め… キスを降らせる。 そう見せつけるように言い… みずきを挑発する。 「このッ!!」 それ以上、アキラに触れさせたくない…! みずきは奥歯を噛んで、全身の力を手首に集中させるよう…硬く縛ってあった紐を恨心の力で引きちぎる。 そのせいで傷が深くなり、手首から滴る量の血が流れるみずき…

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