143 / 144

第143話

「……」 何で礼なんか言うんだよ…? 触れるな、なんて…酷いことを勝手に言ってるのはオレなのに… なんで、許せるんだ…? 緩くみずきの手を握り返し… その相手を見つめる。 「……」 その綺麗な深緑の瞳を…見つめ返すみずき。 久しぶりに触れたアキラの手の温もりを感じ… トクントクンと鼓動が伝わり合う… 見つめあう… 2人の間に… パレードの音楽やネオン…観客のざわめきなど…消え去ったかのように… この世界に…2人だけになったような錯覚を起こさせるほど… お互いしか見えなくなって… みずきは…優しく握った手を引いて… アキラを抱き寄せ… そっと屈んで…アキラの唇にkissを落とす… 唇と唇が、柔らかく触れ合う… すぐ離れる温もり… 「…あ!す、すまない…つい」 はっとして謝るみずき。 「…今だけは…いいって言っただろ?」 上目遣いにみずきを見て…そう囁く… 「あ、アキラ…」 そんなアキラにドキッとしてしまう。 「…今だけ、みずき…」 アキラは自分に言い聞かせるように… もう一度囁いて…みずきに寄り添い… 再びキスを求める。 「アキラ…愛してる、お前だけを…ずっと…」 綺麗な深緑の瞳を見つめ… 心からの想いを伝え… 華奢な身体を、優しく抱き寄せ… その可愛い唇へ、そっとくちづけていく… 「アリガト…」 今まで…ありがとう。 kissの合間にぽつりと零れる言葉… みずきとの思い出は… 今日が最後… 退院したら… 男の飼い犬になる… そうすれば…会うことも少なくなる筈だから… この一瞬だけでも…。 伝えられない想いを隠して… みずきとの優しい時は過ぎて行くのだった…。 《卒業》終。 【スナオになれない4】完結。

ともだちにシェアしよう!