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第2話
「りょーちゃんせんせーおはよ~!!」
「おはよ~う」
昨日の1日で生徒達とも仲良くなり、朝からみんなに囲まれる。
教室の前の方で生徒と話していると後ろのドアが開き、派手な男が入ってくる。
見たこともない生徒でその男は窓際の一番後ろの席に座る。
「・・・え、ぁ、みんなごめん!用事思い出したからちょっと行くねっ、」
突然、身体に何か異変を感じ、囲む生徒を避けるようにして犬飼は勢いよく教室を飛び出した。
異変を起こした身体は自分ではもうどうにも出来なくなる。なんとか、男子トイレに入ったが、個室に入る前に力が入らず座り込んでしまう。
「っ、はぁっ、なんで、?まだ先のはずなのに」
発情期まではまだ期間があり、そんなはずないと不思議に思った。
自身のそれは熱を帯びていて、焦りや恥ずかしさ、恐怖でどうすることも出来なくなった。
数秒後、あの派手な男が入ってくる。
「っ、はぁ、なんでここにいんだよっ…はやく飲め」
するとその派手な男は抑制剤を渡す。派手な男も充分苦しそうだが、犬飼はとりあえず抑制剤を飲まなければ、と思い、力の入らない身体でやっと飲んだ。
派手な男は何も言わず、トイレから立ち去る。
5分後、少し落ち着き、立ち上がると派手な男がまた入ってきた。
「まだ濃いな・・・あ、りょーちゃん先生って言うんでしょ?」
「・・・君は、」
コクリと頷き、相手の名前を問いかけようとすると派手な男は犬飼の頭に手を置く。
「神宮寺 綺良。りょーちゃんの魂の番」
「魂の番?」
確かに神宮寺と会った瞬間身体に異変が起きたのは確かだが、そう簡単に”魂の番”と認めることは難しい。
「ほんっとに。鈍すぎか・・・もうテストだから行くわ。これ、俺の連絡先」
「え、ぁ、ちょ」
いきなり運命の人なんて言われて、しかもそれが神宮寺財閥の息子だなんて、犬飼には到底理解ができなかった。
神宮寺が出た後、まだ身体はだるいが仕事もあるのでなんとか職員室まで戻る。
*
昼休み
小テストは午前で終わり、続々と先生達が職員室へ戻ってくる。犬飼は昼食を食べようと中庭のベンチに向かう。
ベンチには神宮寺が1人で昼食も食べずにただぼーっと座っている。
魂の番なんて訳の分からないこと言ってきた相手だがとても気になるので遠くから声をかけてみる。
「神宮寺なにしてるのー」
それに気付いた神宮寺はちらっと犬飼の方を見てそしてまたぼーっとし、
犬飼が隣に座ると少し離れて座った。
「なに」
不機嫌そうに神宮寺が言う。
犬飼は少し驚いたが、とっさに返す。
「神宮寺、お昼食べないの」
「うん。食べない。持ってきてないし」
「お腹空かないの」
「すごく空いたって訳でもないけど、ちょっとだけ。まぁ耐えられるよ」
そこで犬飼は自分が持ってきた手作りの弁当を開き、神宮寺に見せる。
「僕が作ったやつだけど、いる?」
「・・・いる」
「ん!口に合わなかったらごめんね」
犬飼はそう言うと弁当と箸を渡す。
神宮寺は受け取ると不思議に首を傾げる。
「りょーちゃんの分は」
「僕はいいや笑 次はちゃんと持って来てね」
神宮寺は弁当の卵焼きを箸で掴むと犬飼の口元に持ってくる。
犬飼はえ、という顔をして固まった。
「なんで食べないの。早く食べて」
「え、だって、神宮寺が食べなよ!僕はだいじょぶだから!」
「食べろ。早くしないとキス、するよ?」
神宮寺は悪い笑みを浮かべて犬飼を脅す。犬飼はわかったわかったというようにその卵焼きを口にする。そしてその卵焼きに 我ながら今日ははなまるだな、と評価をつけた。
「ん、うまい」
神宮寺は卵焼きを口にするとそう言って笑う。優しい顔だった。
こんな顔するんだ、なんて犬飼がちょっとだけドキッとしたのはここだけの秘密の話。
3話に続く
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