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 高校1年の春。入学したての頃に、オレは御上に一目惚れした。黒髪短髪で、思慮深い眼差しを含んだ目。それが視界に入った瞬間、オレは目が離せなくなった。  男子校とはいえ同性愛者なんてそうそういるものではなく、御上はどちらだろうと、見かける度にそわそわしていた。接点もなく、目が合った事が数回あっただけの知り合いですらない関係。  ——けれど、高2になって間もなかったあの時。 「……好きなんだ、御上」 「……え?」  口が滑ったんだ。  目の前で固まった御上を見上げて、オレはとんでもない事を言ったんだと、言ってしまって初めて気付いた。 「…ごっ、ごめん!今のナシ!聞かなかった事にして!」 「……いいの?」  焦るオレとは対照的に、御上は優しく笑っていた。 「……俺、男はセフレにしかしないけど。それでいいの?」  その言葉に、結果的に俺は頷く事になったんだけど。  少しの間だけでも、側にいられる場所にいたいと思った——たとえ、それが“遊び”だったとしても。  それから、週に一度は行為に及んだ。放課後の教室や、人がそう寄り付かない理科準備室。体育館裏。色んな場所で身体を重ねた。  最近では、親が夜に仕事に出掛けるという御上の家で、蒸し暑い中身を寄せあった。 「……こうた」 「あや、と…好き…すげぇ、好き」  キスの合間に、そんな言葉を投げかける。御上からは名前だけ。でもそれだけで良かった。 「……はは。言いすぎ」  そう言って、御上は眉を下げて笑う。この笑顔も、今はオレにだけ向けられたもの。  そう思ってればいいのだ。所詮、自己満足なのだから——……

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