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第1話

あー、クッソねみぃ。 自由業だったときは、こんな時間に起きることなんかまずなかった。 それでも、普通のサラリーマンよりはかなり遅い時間に起きてるんだけどね。 ただいま朝の8時。 勤め人になったのなんか新卒で入った会社以来のことだから、仕事を辞めた瞬間に規則正しい生活も手放したようなものだった。 隣のスキンヘッドはまだ夢の中。呑気なもんだよ。重役出勤だから別にいいんだけどさ。 とりあえず、身支度してメシでも作りますかね。 一緒に暮らし始めて数ヶ月。俺はすっかり、彼の専属パン屋になっていた。 「っ、んー」 ゆっくりベッドから降りて、素っ裸で静かに伸びをする。 裸で寝る習慣はなかったけど、奴と暮らし始めてから裸で寝ることが多くなった。否、寝ざるを得なくなった。理由はお察しいただきたい。 首をゴキゴキ鳴らしながら、洗面所に向かう。顔洗って髭剃って歯磨いて、一通りこなしたところで20分くらい。 とりあえずパンツとTシャツを纏って、キッチンに立った。 引っ越して数ヶ月、やっとこの家のシステムとか構造とかに慣れてきた。 引っ越してきてすぐなんか、ハイレベルすぎて意味わかんなかったもん。

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