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「それぞれの、秋」feat.菜の花が咲く前に
空がどんどん高くなってきた。秋だ。程よい寒さが心地いい。
「この季節は、秋刀魚が美味しくなりますね」
「響は秋刀魚? 僕は……秋の食べ物なら、りんごが好き」
久しぶりの休日、二人は猫と縁側で日向ぼっこをしていた。
「あと、夜が長いので小説を読む分にはもってこいです。私、また沢山本を買い込んだんですよ。この夜長に読むにはちょうど良くて」
にこにこ話す響に対し、さして本に興味の無い芽以はため息をつく。
「また始まった。そんなだから目、悪くなるんだよ」
「別に構いませんよ、失明さえしなければ。文学は知識を与えてくれますからね。そうそう、最近買った書籍で興味深かったのは……」
恍惚とした表情で文学の話を始める響。この調子で聞き続けていると、日が暮れかねない。ふと、芽以は買い物に付き合った際に彼が買った本を思い出す。
「……ねえ、この前何で胡散臭い画報買ってたの?」
ぎくり、とした表情を見せる響。眼鏡越しの目が泳いでる。芽以は知っていた。先日買った画報の内容が、露骨な性的倒錯特集のものだと。やれやれ、相手がいるからって何か試す気なのだろうか。
まあ、いいか。期待半分不安半分にしよう。芽以は苦笑し猫を撫でた。
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